改訂新版 世界大百科事典 「ヒレアシ」の意味・わかりやすい解説
ヒレアシ (鰭足)
ツル目ヒレアシ科Heliornithidaeの鳥の総称。アメリカヒレアシHeliornis fulica(英名sungrebe),アジアヒレアシHeliopais personata(英名masked finfoot),アフリカヒレアシPodica senegalensis(英名finfoot)の3属3種よりなり,解剖学的特徴はクイナ科に近いが,外観はウ科,ヘビウ科,カイツブリ科の鳥などに似たところがある。
アフリカにアフリカヒレアシ,南アジアにアジアヒレアシ,熱帯アメリカにアメリカヒレアシが分布している。全長31~60cm。3種とも頭頸(とうけい)部は黒色ないし灰色で,種によっては額から頸部を通るよく目だつ白線がある。背,尾,翼は褐色でこまかい白斑があり,胸腹部は白く,上胸部と脇には褐色の波状斑がある。くちばしは細長く,先がとがっている。脚はやや短く,カイツブリ類のように体の後ろにつき,あしゆびにはオオバンと同様の弁状の水かきがある。生息数が少ないので生態はよくわかっていない。河川や湖沼の水深の浅い岸辺にすみ,とくに樹木のよく茂ったところで生活している。泳ぐのはうまく,水の浅いところで各種の小動物,カエル,エビ,カニ,貝類,昆虫などをとっている。しかし,魚はほとんどとらないといわれている。潜水もできるが,潜ることはあまりない。地上に草木の葉や茎を集めて巣をつくる。1腹の卵数は2個。つがい関係,抱卵,育雛(いくすう)などについてはいまのところ,よくわかっていない。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報