オオバン(その他表記)Fulica atra; Eurasian coot

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオバン」の意味・わかりやすい解説

オオバン
Fulica atra; Eurasian coot

ツル目クイナ科。全長 32~42cm。全身黒色で,と上嘴の基部から後方に広がる肉質部位の額板が白い。指と指の間が離れ,各指に葉のような形をした蹼(みずかき)がついている弁足と呼ばれる足をもつ。趾(あしゆび)は長く,指ごとにかいがついているようなもので,水中で巧みに方向を変え,食べ物をとる。広い湖沼や池にすみ,水草や昆虫,貝などを食べる。ヨーロッパから東アジアシベリア南部,サハリン島,日本と,南アジアからインドシナ半島オーストラリア分布する。北部生息する鳥は温帯熱帯に渡って越冬する。日本でも九州地方北部から北海道で繁殖しているが,分布はかぎられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオバン」の意味・わかりやすい解説

オオバン
おおばん / 大鷭
coot
[学] Fulica atra

鳥綱ツル目クイナ科の鳥。全長約38センチメートル。全身ほとんど灰黒色で、頭頸(とうけい)部は黒く、次列風切(かざきり)の先端が白い。額に乳白色の額板があり、嘴(くちばし)も白色。足指には葉状水かきがあり、弁足である。旧世界に広く分布する。本州中部以北で繁殖し、冬期には中国南部、フィリピンなどに渡るが、南日本で越冬するものもある。ヨシ水辺植物のよく茂った湖沼、河川、池などにすみ、水生植物の種子、芽、根などを主食としているが、水生昆虫や小魚も若干食べる。習性はバンに似て、頭を前後に振り動かしながら水面を泳ぎ回り、またしばしば潜水して餌(えさ)をあさる。巣はヨシやマコモのなかに水辺植物の茎や葉を積み上げてつくられ、5~7月ごろ1腹8~12個の卵を産む。抱卵、雛(ひな)の世話は雌雄で行う。

 本種の含まれるオオバン属Fulicaには世界で9種が知られており、アフリカ大陸、マダガスカル島に額に赤いこぶのあるコブオオバンF. cristata、アンデス山地に額に肉状突起のあるツノオオバンF. cornuta、南アメリカには嘴の黄色いキバシオオバンF. leucopteraなどがいる。

[森岡弘之]


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改訂新版 世界大百科事典 「オオバン」の意味・わかりやすい解説

オオバン (大鷭)
coot
Fulica atra

ツル目クイナ科の鳥。ユーラシア大陸の亜寒帯以南に広く分布し,またニューギニア,オーストラリア,タスマニアまで分布する。旧北区の北部で繁殖するものはアフリカ,アジアの温帯から熱帯に渡り越冬。日本では本州中部以北で繁殖し,冬季は本州中部以南で見られる。湖沼や池にすみ,とくに営巣場所や隠れ場になるヨシやマコモなどの繁茂しているところを好む。全長約40cm。くちばしと額板と次列風切の先端が白いほかはほぼ全身がすすけた黒色。眼の虹彩は赤くてよく目だつ。非繁殖期には群れになって生活しているが,5~7月の繁殖期には湖面テリトリーを形成して,ヨシなどの枯茎を集めて水面に営巣する。1腹の卵数は6~12個。潜水しておもに小魚やエビなどをとるほか,各種の水草の茎や根部も食物としている。
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知恵蔵mini 「オオバン」の解説

オオバン

ツルの仲間の水鳥。アメリカ大陸・北極南極を除き、全世界的に生息している。全長30~40センチメートルほどで、全身のほとんどが黒く、くちばしから額にかけて真っ白な部分がある。日本では、主に北海道や本州中部以北の湖・沼・池など水辺で繁殖する。埼玉県・京都府・奈良県でそれぞれ「絶滅危惧IA類」「準絶滅危惧種」「希少種」に指定されているが、近年は増加傾向にある。滋賀県の調査では琵琶湖周辺で急増しており、2014~15年の冬に、約10年前の3倍近くにあたる約6万羽の生息が確認された。

(2015-6-26)

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百科事典マイペディア 「オオバン」の意味・わかりやすい解説

オオバン

クイナ科の鳥。翼長21cm。体は灰黒色で,額板は白色。ユーラシア大陸中南部,オーストラリアに分布。日本では本州中部以北で繁殖し,冬は南へ移る。湖沼に生息,浅水中にアシ,マコモ等を積み上げて巣とする。水草および昆虫,小魚を食べる。
→関連項目バン(鳥)

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世界大百科事典(旧版)内のオオバンの言及

【バン(鷭)】より

…抱卵は雌雄交替で行い,雛は孵化(ふか)後まもなく両親について巣を離れる。近縁種のオオバン(イラスト)は額とくちばしが白く,飛んだとき次列風切後縁に白線が出るので,バンと見分けることができる。【安部 直哉】。…

※「オオバン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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