日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒーブ」の意味・わかりやすい解説
ヒーブ
ひーぶ
HEIB
企業内において、消費者からの商品に対する苦情や消費者問題などを担当し、企業と消費者とのパイプ役を果たす企業内家政学士Home Economists in Businessの略称。ヒーブは、1923年アメリカ家政学会にビジネスセクションとしての分科会として設立されたのが発祥である。その分科会の会員が、企業内家政学士、ヒーブとして活動してきた。大量消費の進展に伴い企業も真剣に消費者問題に取り組む必要が生じ、その中にあってヒーブは、単に消費者の自社製品に対する苦情の処理だけでなく、消費者の相談相手として、消費者が商品の選択能力を身につけ、また消費者のために、より優れた商品が生産、販売されるように努めるなど消費者と企業を結ぶ役割を担ってきた。
日本でも1970年代に入って家政学科出身者の新しい職業分野として注目されてきたが、アメリカとは異なり家政学士に限らず「生活者と企業のパイプ役として、生活者の視点を生かして仕事をする」ことを重視し、企業の消費者関連部門(消費者相談、商品開発、マーケティング、広報など)で働く人をヒーブとよんでいる。1978年(昭和53)には「日本ヒーブ協議会」が設立され、企業の消費者対応、消費者教育、広報、商品開発などの多様な分野で活躍する女性たちが集い、異業種交流の特徴を生かしながら、2010年(平成22)6月現在、約140名の会員が活発な情報交換を行っている。会員の所属企業(約120社)の多くは消費者とのかかわりが深い食品、化学、電機等の最終消費財メーカーが中心となっている。ヒーブになるための資格・条件はないが、企業を取り巻く様々な経営環境変化や消費者志向の高まりの中で、ヒーブとして活躍するには、社会生活に対する幅広い知識が必要となり、またその視点を企業のビジネスに結びつける説得力と実践力が求められる。
[仙波千代・片岡まり・日本ヒーブ協議会]