英語のままマーケット・リサーチ、またはマーケティング・リサーチmarketing researchともいう。生産者から消費者に至る財またはサービスの流れに関連しておこる事象について、企業が意思決定のための情報を収集し、記録し、分析することをいう。市場予測、市場分析、広告調査、消費者調査などは、すべて市場調査に含まれ、その一部を構成する。
市場調査の目的は、経営者が市場や消費者を志向しながら適切に意思決定をするよう、正確な情報と科学的方法を提供することである。すなわち市場調査は、意思決定者に対して、市場ないしマーケティングに関する的確な判断材料を与える。たとえば、潜在需要の量と質、製品系列の選択、市場の組合せ、流通経路の選択、広告その他の販売促進手段の妥当性、競争状態などの決定ないし判断には、市場調査による情報が不可欠である。
市場調査の内容は次のごとくである。かなり重複する面もあるが列挙する。
(1)製品またはサービスの潜在需要の測定。
(2)販売促進努力の効果の測定。
(3)現在製品および新製品にとってもっとも有利な流通を行うための経路調査。
(4)もっとも有望な新事業分野の調査。
(5)消費者が特定の商標を選択する理由を検討する商標調査。
(6)製品の品質、デザインおよび包装についてその長短を吟味する製品調査。
(7)販売予測、販売割当て、広告予算、販売員報酬の基礎にするため、景気変動、季節変動、流行などの推移を分析する経済調査。
(8)消費者需要の状態や動向をつかむ需要調査。
(9)広告効果の測定。
(10)PRの有効性調査。
市場調査の実施手続はおよそ次の順序で行われる。(1)問題の規定、(2)既存資料の検討、(3)必要資料の確定、(4)資料の収集、(5)資料の整理、(6)資料の分析と解釈、(7)結論の抽出と報告書の作成。調査の成否を左右するのは資料の収集である。そのうち、外部資料の収集については、特定の標本(サンプル)について一連の質問を発する方法によることが多い。質問の方法としては、郵便、電話、直接訪問による面接などがある。また特定の標本について、これら三つの方法を併用し、継続的に特定の製品やサービスに対する知識・意見・行動を調査するような方法(パネル調査)もある。すべての調査がそうであるように、市場調査においても、標本の選択、質問項目の作成、接近方法の適否は、その結果に大きな影響力を与える。そのため、調査の内容によって、それらを慎重に選択することが必要になる。
市場調査には、用いる技術、資料の範囲、調査の深さなどによって、いくつかの型がある。代表的なものを列挙すれば、次のごとくである。
(1)経済調査 財やサービスの流通に関する経済的・社会的諸条件の調査で、主として既存の外部経済的資料の解析によって行う。その調査範囲は、国民経済全般、特定地域、特定産業などであり、国際化の進展とともに海外市場に及ぶことも多くなってきた。
(2)管理計数分析調査 内外の主として管理計数ないし会計数値を資料とするもので、過去の販売実績、販売経費の予算実績差異分析、製品別・地域別・販売店別・販売員別・期間別の販売分析、在庫回転の分析などが含まれる。
(3)消費者標本抽出調査 市場調査の代表的なものであり、さまざまな基準を用いて消費者を抽出し、前述した質問の方法によって需要の内容や動向を調査する。統計学的な調査手法とコンピュータのような機器が、大量のデータの科学的処理による推計を可能にした。
(4)パーソナル・スタディ 心理学的手法(態度分析など)を用い、販売員の選考、配置、訓練のための資料の収集と分析を行う。
(5)メソッド・スタディ 販売活動に関する作業研究であり、販売員に対する販売割当ての資料となる。
(6)市場実験 新製品販売の広告の効果を解明するためのシミュレーションで、比較による効果測定を行う。
[森本三男]
『出牛正芳著『市場調査入門』(1997・同文舘出版)』
商品ならびにサービスが供給者から需要者へ渡り,使用されるまでの流通過程におけるあらゆる問題を調査の課題に取りあげる。販売調査,販売経路調査,価格調査,商品調査,消費者調査,広告調査,人的販売調査などが,これに含まれている。これらの調査では,(1)問題の限定,(2)既存データおよび生データの収集,(3)収集データの整理,(4)データの集計・分析・解釈,(5)報告書の作成,などの作業段階が設定される。これらの調査は,個別企業が意思決定を的確に行うために実施するもので,社内・社外データ,量的・質的データ,国内・国外データなど,多角的データが用いられ,その大量のデータを処理するためには電算機が不可欠になってきている。マーケット・リサーチmarket research(市場についての調査)の訳語として〈市場調査〉の語が使われることもあるが,今日ではマーケティング・リサーチに含めて考えられることが多い。
→マーケティング・リサーチ
執筆者:奥田 和彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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