ビタミンB1欠乏症

内科学 第10版 「ビタミンB1欠乏症」の解説

ビタミンB1欠乏症(ビタミン欠乏症)

(1)ビタミンB1欠乏症
 ビタミンB1チアミン)は植物で合成され,小腸から吸収される.人体には骨格筋を中心に25~30 mgのビタミンB1が貯蔵されている.偏食,吸収不良(アルコール依存症,葉酸欠乏症,肥満外科手術を含む消化管切除),喪失量増加(下痢,利尿薬),需要量増加(妊娠,過度の肉体労働,甲状腺機能亢進症),高カロリー輸液内へのビタミンの入れ忘れなどにより欠乏症が出現する.
a.脚気(beriberi)
概念
 長期間のビタミンB1欠乏後に発症する.心不全をきたす浮腫型(wet beriberi)と心不全を伴わない末梢神経障害型(dry beriberi)に分類されるが,重複例もある.
臨床症状
 浮腫型では顔面や下肢の浮腫,心肥大,頻脈,心拍出量増加による心不全,食欲不振などを呈する.末梢神経障害の症状として,四肢,特に下肢末梢に強いビリビリとした異常感覚,進行すると感覚鈍麻,アキレス腱反射消失,四肢遠位部の筋力低下などを生じる.
検査成績
 血中ビタミンB1の低値(40 ng/mL未満),ビタミンB1を補酵素とするトランスケトラーゼ活性値の低下,低下したトランスケトラーゼにチアミンを添加してその活性値の上昇(25%以上)をみるチアミンピロリン酸塩効果,乳酸アシドーシス,末梢神経伝導速度検査や神経生検で軸索障害型の障害を認める.
治療
 10~100 mgのビタミンB1を3~7日間静注する.25~50 mg/日の経口投与も有効である.
b.Wernicke脳症
概念
 多くは慢性のアルコール多飲者,ほかに悪性腫瘍,ビタミン補給なしでの長期間の経静脈栄養,妊娠悪阻などで比較的急速に発症する神経障害である.
臨床症状
 外眼筋麻痺,運動失調,意識障害を3主徴とするが,すべての症状を呈するのは全症例の1/3以下である.両側の外転神経麻痺や水平眼振,進行すると完全な外眼筋麻痺となる.失調性歩行,体幹失調,構音障害を認め,意識障害は傾眠から昏睡まで多様である.意識障害はアルコール離断症状の振戦譫妄鑑別が困難なこともある.覚醒時に見当識障害,記銘力低下,作話などのKorsakoff症候群を示す.
検査成績
 視床内側,中脳水道近傍,乳頭体にMRIのT2強調画像で高信号,急性期には造影効果を示す病変が特徴で,診断的価値がある.
治療
 臨床症状から本疾患を疑ったら検査結果を待たずに早急にビタミンB1を100~200 mg静注することが重要である.以降は50~200 mgを経口または筋注で継続投与する.ビタミンB1補充が早いほど予後は良好であり,外眼筋麻痺,運動失調は数日から数週間で回復する.しかしKorsakoff症候群は持続することが多い.チアミンなしにグルコースを投与するとWernicke脳症を悪化させることがあるので,必ずグルコース投与前にチアミンを投与する.[中里雅光]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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