特定の食品を嫌って食べない、あるいは限られた食品ばかりを好んで食べるような偏った食事をすることをいう。食品の種類はきわめて多いが、通常の食生活は、家庭環境、経済、嗜好(しこう)などによって営まれている。したがって、各家庭の食事も、食品の種類や調理の方法が異なるのが普通であり、日常の摂取食品に偏りのあることは否めない。こうした食生活において、その人の健康に支障がなければ問題はないが、ごくありふれた、多くの人たちが摂取している食品を嫌い、極端に偏った範囲の食品しか食べず、そのために栄養素の不足を招き、健康を害するような食事を繰り返す場合には、栄養的な矯正対策を講じなければならない。とくに子供の偏食は、発育上からも大きな問題となる。
子供の偏食の原因は、〔1〕親の好む味や形に調理される、〔2〕「栄養があるから」「頭がよくなるから」などと強制を重ねる、〔3〕親の嫌う食品が、いつのまにか暗示となる、〔4〕ある食品を食べて、嘔吐(おうと)や下痢などをおこした経験をもつ、〔5〕小魚は小骨が多くて食べにくい、熱くて食べにくいなどによる食欲の減退、〔6〕食品の形や臭(にお)いなどが不快な連想をよぶ、〔7〕動物はかわいいからといった理由で肉類を嫌う、など多彩である。こうした子供の偏食を矯正するためには、親がその原因をつかみ、改善していくとともに、食物の好き嫌いを忘れさせるような食事の雰囲気づくりも肝要となる。また、子供同士の集団生活、集団給食などが功を奏する場合も多い。
[井上義朗]
特定の食品をとくにきらって食べなかったり,あるいは好んで食べる傾向をいう。離乳の段階からその兆しがみえ,4~5歳までにはっきりとした傾向がみられることが多い。偏食にはいろいろな種類や程度があるが,栄養学的に代替のきかないもの,たとえば成長に必要な肉,魚,卵などのタンパク質をまったくきらう場合などが非常にやっかいであり,このような場合には専門家に相談する必要がある。しかし,この種のものは例外で,多くの場合は,魚はきらいであるが肉は好きといった代替のきくものである。1歳児の時期に,どんなものでもひととおりは食べられるようにしておくこと,食べずぎらいにしないこと,家族内に偏食者があればその人からまず偏食をやめること,間食を少なくすること,調理にくふうを加えることなど,偏食をなくすためには家族全体の協力が必要である。
執筆者:日暮 真
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