ビトリア(読み)びとりあ(英語表記)Francisco de Vitoria

デジタル大辞泉 「ビトリア」の意味・読み・例文・類語

ビトリア(Vitoria)

スペイン北部、バスク州の都市。同州の州都。12世紀にナバラ王国サンチョ6世が都市を築き、商工業の中心地として発展。現代は自動車工業、化学工業が盛ん。旧市街には14世紀に建てられたゴシック様式のサンタマリア大聖堂、15世紀の城館をはじめ歴史的建造物が多い。毎年7月に国際的なジャズ音楽祭が催される。15世紀に起源するトランプの生産地としても知られる。バスク語名ガステイス。
ブラジルエスピリト‐サント州の州都。大西洋に面する湾内の島に建設された。コーヒーの積み出し港として栄える一方、近年は製鉄や石油化学の工場群も立地する。人口31.3万(2005)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビトリア」の意味・わかりやすい解説

ビトリア(Francisco de Vitoria)
びとりあ
Francisco de Vitoria
(1480?―1546)

スペインのサラマンカ大学の神学教授。国際法の父グロティウスの先駆者として、16世紀において、今日の国際法思想の基本となる考え方を、最初に明白に説いた。

 ビトリアは一冊の著書も書かなかったが、ただサラマンカ大学で行った公開の特別講義だけは、死後編纂(へんさん)され、『神学特別講義』として1557年に出版された。このなかに含まれている「最近発見されたインディオについて」と「野蛮人に対するスペイン人の戦争の法について」の二つの特別講義は、国際法学の貴重な古典として高く評価される。これらはいずれも、当時の重大な政治的・社会的な現実問題であった、いわゆる「インディオ問題」、つまりコロンブスアメリカ大陸発見に続いて、新大陸に渡ったスペインの植民者たちの言語に絶する残虐非道な迫害から、インディオを保護しなければならないという問題を取り上げ、それを道徳神学の立場から論じたものである。

 その際、ビトリアは、インディオの基本的人権を保護する必要を、次のように主張した。すなわち、アメリカのインディオのような異教徒ヨーロッパキリスト教徒も、すべての人間は、人間であるという共通の本性によって普遍的な人類社会を構成するが、その社会にはすべての人間に当てはまる共通の法が支配し、その法によって人間はだれでも人間としての基本的な権利が保障されている。それゆえに、スペイン人がインディオに対して行う戦争も、その普遍的人類社会に共通な法によって規律されるべきであり、したがって、異教徒であり野蛮人であるという理由で、彼らに対してむやみに非道な残虐を加えることは許されない、と。この場合、彼が説いた普遍的人類社会とその社会に共通の法が支配するという根本の思想が、結局、今日の国際法の基本観念となったといえる。そのために、ことにスペインでは、グロティウスよりもむしろビトリアのほうが、「国際法の父」とよばれるのにふさわしい、とさえいわれるくらいである。

[伊藤不二男 2017年12月12日]

『伊藤不二男著『ビトリアの国際法理論』(1965・有斐閣)』


ビトリア(スペイン)
びとりあ
Vitoria

スペイン北部、バスク地方アラバ県の県都。人口21万6852(2001)。エブロ川支流が流れる盆地内に細長く延びた丘陵上の標高550メートルに旧市街がある。西ゴート起源と考えられている要塞(ようさい)都市であったが、ナバラ王国時代にはその保護により商工業の中心として発展した。サンタ・マリア大聖堂(14世紀)や城(15世紀)、細い道路、古い家などが旧市街に残っている。その後鉄道が敷かれ、家具や農耕機械などの工場が駅周辺に立地した。現在は自動車、化学工業も発展している。近世スペインの神学者であり、今日の国際法の先駆をなす思想を説いたフランシスコ・デ・ビトリアの生地。

[田辺 裕・滝沢由美子]


ビトリア(ブラジル)
びとりあ
Vitória

ブラジル南東部、エスピリト・サント州の州都。人口29万2304(2000)。ビトリア湾口の同名の島の南東部に位置する港湾都市で、州政庁、大伽藍(がらん)など優雅な建築物が多く、美しい町並みをもつ。ドーセ川を通じてのミナス・ジェライス州の海への玄関にあたり、同州産の鉄鉱石ローズウッドの多くがこの港から輸出される。コーヒー、カカオなどの輸出港でもある。郊外のツバロンには鉄鉱石の専門輸出港(25万トンの専用船の係留が可能)、ブラジル・日本・イタリア合弁のツバロン製鉄所(年産300万トン)がある。

[山本正三]

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改訂新版 世界大百科事典 「ビトリア」の意味・わかりやすい解説

ビトリア
Francisco de Vitoria
生没年:1480?-1546

近世スペインのカトリックの神学者であるが,グロティウス以前に近代国際法の思想を明確に説いた学者として近年注目されている。彼はみずから著書を残さなかったが,死後,大学における講義をまとめた《神学特別講義》(1557)が公刊された。これは,当時の政治や法律の問題を題材に実践的な道徳神学を説いたものであるが,その中の〈インディオについて〉と〈戦争の法について〉の二つの講義が国際法的に見て重要である。その中で,彼は当時発見されたアメリカ大陸におけるスペイン人植民者の交易や戦争の権利や,原住民の法的地位について論じ,自然法がキリスト教徒のみならず異教徒にも適用されると説き,今日の国際法の先駆ともいうべき普遍的人類社会の法の存在を主張した。
執筆者:


ビトリア
Vitória

ブラジル南東部,エスピリト・サント州の州都。人口31万7085(2005)。サンタ・マリア川の河口に近く,大陸と水路でへだてられた島上にある港湾・商工業都市。大陸とルネサンス風の橋で結ぶ。ベロ・オリゾンテへ道路で約500km,鉄道でも結ばれる。ビトリア港のほかにミナス・ジェライス州のイタビラをはじめ諸鉄鉱山の鉄鉱石の専用積出し埠頭をもつトゥバロン港がある。トゥバロンには,日系資本合弁の製鉄所が建設されている。1551年に植民都市創設。エスピリト・サント大学があり,スイス人,ドイツ人移住者を記念するド・コロノ博物館がある。海岸は美しく,観光・保養地。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビトリア」の意味・わかりやすい解説

ビトリア
Vitória

ブラジル南東部,エスピリトサント州の州都。リオデジャネイロの北東約 420km,大西洋岸の港湾都市で,エスピリトサント湾内にあるビトリア島にあり,本土とは橋で結ばれる。 1535年ポルトガル人が建設。第2次世界大戦後ミナスジェライス州の鉱山地帯と鉄道で結ばれ,同国最大の鉄鉱石積出港として発展。 1962年以降積出量が大幅に増加し,それまでの港湾施設では扱えなくなったため,北のトゥバランに大型の鉱石輸送船が入港できる新港が建設された。ビトリア港からは鉄鉱石のほか,コーヒー,モナズ石,木材などを積出す。同州の主要工業中心地でもあり,市内外には石油精製,繊維,製糖,コーヒー処理などの工場がある。エスピリトサント連邦大学 (1961) 所在地。リオと鉄道,道路で連絡。人口 25万 8245 (1991推計) 。

ビトリア
Vitoria

スペイン北東部,バスク州,アラバ県の県都。エブロ川の支流サドラ川左岸に位置する。 581年西ゴート王レオビギルドが対バスクの戦勝を祝いビクトリアクムとして建設した町。 1200年カスティリア王アルフォンソ8世が征服,王国の一部とした。旧市街は丘の上に聖母マリア大聖堂 (1180創建,14世紀再建) を取囲んで広がる。聖ミゲル (12世紀) ,聖ペドロ (14世紀) などの古い聖堂や,1946年に完成した新大聖堂が下町の新市街に位置する。近郊にラフロリダ公園として知られる庭園がある。家具,自動車,農業機械などの製造と製糖が行われる。人口 20万 4961 (1991推計) 。

ビトリア
Vitoria, Francisco de

[生]1483? ブルゴス/ビトリア
[没]1546.8.12. サラマンカ
スペイン最大の神学者の一人。ドミニコ会士。ブルゴスで学び,1526年サラマンカ大学神学教授。スペインの新スコラ学派の創立者。主著『神学講義』 Relectiones theologicae (1557) は死後編集された講義集で,第4~5講はスペインのインディオ統治を論じ,国家哲学を展開して近代国際法の始祖とされる。戦争を正義の回復としてのみ認め,自然法を原理として,スペインのインディオよりの略奪を批判した。 1926年ビトリア協会がスペインに創立された。

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百科事典マイペディア 「ビトリア」の意味・わかりやすい解説

ビトリア

ブラジル南東部,エスピリト・サント州の州都。エスピリト・サント湾の島上に位置する。第2次大戦後,ミナス・ジェライス州のイタビラ鉱山を初めとする鉄鉱石の最大の輸出港になり,1962年以降港の能力を超えたため,北に隣接するツバロン地区に日本,イタリア,ブラジルの共同出資で鉄鉱石の専用積出し埠頭のある新港が1983年完成,またツバロン製鉄所(年産350万tの鉄鋼半製品を輸出)が建設された。1551年の植民都市創設に始まる。32万156人(2009)。

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