スペインのサラマンカ大学の神学教授。国際法の父グロティウスの先駆者として、16世紀において、今日の国際法思想の基本となる考え方を、最初に明白に説いた。
ビトリアは一冊の著書も書かなかったが、ただサラマンカ大学で行った公開の特別講義だけは、死後編纂(へんさん)され、『神学特別講義』として1557年に出版された。このなかに含まれている「最近発見されたインディオについて」と「野蛮人に対するスペイン人の戦争の法について」の二つの特別講義は、国際法学の貴重な古典として高く評価される。これらはいずれも、当時の重大な政治的・社会的な現実問題であった、いわゆる「インディオ問題」、つまりコロンブスのアメリカ大陸発見に続いて、新大陸に渡ったスペインの植民者たちの言語に絶する残虐非道な迫害から、インディオを保護しなければならないという問題を取り上げ、それを道徳神学の立場から論じたものである。
その際、ビトリアは、インディオの基本的人権を保護する必要を、次のように主張した。すなわち、アメリカのインディオのような異教徒もヨーロッパのキリスト教徒も、すべての人間は、人間であるという共通の本性によって普遍的な人類社会を構成するが、その社会にはすべての人間に当てはまる共通の法が支配し、その法によって人間はだれでも人間としての基本的な権利が保障されている。それゆえに、スペイン人がインディオに対して行う戦争も、その普遍的人類社会に共通な法によって規律されるべきであり、したがって、異教徒であり野蛮人であるという理由で、彼らに対してむやみに非道な残虐を加えることは許されない、と。この場合、彼が説いた普遍的人類社会とその社会に共通の法が支配するという根本の思想が、結局、今日の国際法の基本観念となったといえる。そのために、ことにスペインでは、グロティウスよりもむしろビトリアのほうが、「国際法の父」とよばれるのにふさわしい、とさえいわれるくらいである。
[伊藤不二男 2017年12月12日]
『伊藤不二男著『ビトリアの国際法理論』(1965・有斐閣)』
スペイン北部、バスク地方アラバ県の県都。人口21万6852(2001)。エブロ川支流が流れる盆地内に細長く延びた丘陵上の標高550メートルに旧市街がある。西ゴート起源と考えられている要塞(ようさい)都市であったが、ナバラ王国時代にはその保護により商工業の中心として発展した。サンタ・マリア大聖堂(14世紀)や城(15世紀)、細い道路、古い家などが旧市街に残っている。その後鉄道が敷かれ、家具や農耕機械などの工場が駅周辺に立地した。現在は自動車、化学工業も発展している。近世スペインの神学者であり、今日の国際法の先駆をなす思想を説いたフランシスコ・デ・ビトリアの生地。
[田辺 裕・滝沢由美子]
近世スペインのカトリックの神学者であるが,グロティウス以前に近代国際法の思想を明確に説いた学者として近年注目されている。彼はみずから著書を残さなかったが,死後,大学における講義をまとめた《神学特別講義》(1557)が公刊された。これは,当時の政治や法律の問題を題材に実践的な道徳神学を説いたものであるが,その中の〈インディオについて〉と〈戦争の法について〉の二つの講義が国際法的に見て重要である。その中で,彼は当時発見されたアメリカ大陸におけるスペイン人植民者の交易や戦争の権利や,原住民の法的地位について論じ,自然法がキリスト教徒のみならず異教徒にも適用されると説き,今日の国際法の先駆ともいうべき普遍的人類社会の法の存在を主張した。
執筆者:尾崎 重義
ブラジル南東部,エスピリト・サント州の州都。人口31万7085(2005)。サンタ・マリア川の河口に近く,大陸と水路でへだてられた島上にある港湾・商工業都市。大陸とルネサンス風の橋で結ぶ。ベロ・オリゾンテへ道路で約500km,鉄道でも結ばれる。ビトリア港のほかにミナス・ジェライス州のイタビラをはじめ諸鉄鉱山の鉄鉱石の専用積出し埠頭をもつトゥバロン港がある。トゥバロンには,日系資本合弁の製鉄所が建設されている。1551年に植民都市創設。エスピリト・サント大学があり,スイス人,ドイツ人移住者を記念するド・コロノ博物館がある。海岸は美しく,観光・保養地。
執筆者:西川 大二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新