日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビルダー」の意味・わかりやすい解説
ビルダー
びるだー
builder
繊維用合成洗剤の洗浄力を高めるために加えられる薬剤。洗浄促進剤と訳されることもある。初期には炭酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムおよび過ホウ酸ナトリウムなどが用いられた。合成洗剤が発達するにつれて、一般の家庭に電気洗濯機が急速に普及し、家事に費やされる主婦の労力は大いに軽くなった。続いて新しいビルダーとして、硬水中でも不溶性の沈殿が生成しないトリポリリン酸ナトリウムが登場した。これをABSあるいはLAS(ラス)洗剤に全体の20~30%加えると、洗浄力が優れ、繊維に汚れが再付着せず、また布が黄変しないなどの性質が得られた。しかし、この洗浄廃水が河川や湖沼に放流されると、そのリン成分が栄養分として作用し、湖沼や、水が停滞しがちな水域では富栄養化をおこし、水質を悪化させるおそれがある。日本では1980年(昭和55)に琵琶(びわ)湖の水質汚染の進行を防止する目的で、滋賀県で、リンを含むビルダーの使用を禁止し無リン洗剤の使用を初めて義務づけた。これをきっかけとして無リン洗剤が急速に普及し、現在では家庭用合成洗剤のほとんどすべては無リン化されている。この場合にはトリポリリン酸ナトリウムにかわるビルダーとして、固体のイオン交換体であるゼオライトAが加えられている。
[早野茂夫]