翻訳|Peter Pan
イギリスの劇作家J.M.バリーの同名の戯曲(1904初演)の主人公。最初に登場したのは小説《小さな白い鳥》(1902)においてであった。ロンドンに住むダーリング家の娘ウェンディとその弟2人が,ピーター・パンという永遠に成長しない少年に連れられて不思議な島へ行き,俗世間から行方不明になっていた少年たちに歓迎されたり,ピーターをねらう海賊フック船長やその一党と戦ったりした末,ロンドンへ戻るという物語である。ビクトリア朝風の少年冒険物語に似ているが,大人になることを拒否する少年を主人公にしている点に倒錯した心理がうかがわれる。そのため,現代青年の一部に認められる幼児化現象についてピーター・パンの名が用いられることがある。この戯曲の成功によって,バリーは同じ物語を扱った小説《ピーターとウェンディ》(1911)を発表した。戯曲は,イギリスでは必ずクリスマスのころに幼い観客のために上演される。また1950年,L.バーンスタイン作曲によってブロードウェーのミュージカルにもなった。なお,ピーター・パンのすみかとされるロンドンのケンジントン・ガーデンズに,1912年ピーター・パン像(フランプトンGeorge Frampton作)が建てられた。
執筆者:喜志 哲雄
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イギリスの劇作家J・M・バリーの同名の空想劇(1904)の主人公で、けっして大人にならない子供。小鳥のように空を飛ぶ。牝犬(めすいぬ)ナナに育てられる人間の少女ウェンディと彼女の2人の弟とは、ある日ピーターに誘われて空を飛び、彼の住む「ないない国」(ネバーランド)へくる。そこには乳母車(うばぐるま)から転げ落ちて行方不明になった6人の男の子、インディアンの一族、右手が鉄の鉤(かぎ)になっている獰猛(どうもう)な船長フックを首領とする海賊の一味、腹の中に時計を飲み込んでいる鰐(わに)、人魚たち、妖精(ようせい)のティンカー・ベルなどがいて、彼らの間に、追いつ追われつ、奇想天外な事件が続発する。万人にある永遠の童心に訴える名作で、作者自身によって小説(『ピーター・パンとウェンディ』1911)にもされている。
[冨原芳彰]
『本多顕彰訳『ピーター・パン』(新潮文庫)』▽『石井桃子訳『ピーター・パンとウェンディ』(1957・岩波書店)』
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…1880年代初めから戯曲や小説を書き始めたが,当初はあまり成功せず,やがてみずからの少年時代を素材にした感傷的な小説によって注目されるようになった。しかし90年代末ごろからは主として劇作を仕事とし,自作の小説を脚色した《ピーター・パン》(1904初演)によって名声を不動のものとした。これは,ある家の子どもたちがピーター・パンという永遠に成長しない少年とともに不思議な島で種々の冒険に遭遇するという物語で,児童劇の古典として今も愛好される。…
※「ピーターパン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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