童話を内容とし,児童の理解力と興味を考慮してつくられた劇。童話劇Märchendramaは空想的・直感的な児童の心的特性に応じて超自然的な人間や生物が登場したり,夢幻的な場面が多くさし入れられたり,擬人化の手法が用いられたり,総じて非現実的な色彩がつよい。卑近な教訓性をふくむおとぎ話の脚色ものから,文芸作品として独立できる芸術性の高いものまで,その筋立てやテーマの展開については,かなり幅ひろい相違もみられる。後者の代表例としては,メーテルリンクの《青い鳥》,バリーの《ピーター・パン》などがある。
童話劇が観客として児童をおもな対象とする以上,これは〈児童劇〉の一つであるが,一方,童話は児童の独占物ではなく,たとえば《青い鳥》における幸福の象徴的表示,《ピーター・パン》における永遠の童心の追求などは成人にも共鳴をあたえる普遍的なテーマでもある。現実世界からの脱却,夢幻へのあこがれという点についても,これは児童のみの心的傾向ではない。この意味で童話的な素材の配置,構成をとりながら,意図と効果において一般戯曲と異ならぬ童話劇も書かれている。好例はドイツ・ロマン派のそれであり,ティークの《青ひげ騎士》,フーケF.Fouqué(1777-1843)の《小びと》など,さらにはハウプトマンの《沈鐘》などもあげられよう。《青ひげ》では人間の残虐性と文壇への風刺が,《沈鐘》では芸術家の精神的苦悩が描かれるが,その形式と要素においては童話的色合いの濃いものである。
執筆者:木檜 禎夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…以後大正期にかけ〈有楽座子供日〉(日曜・祝日)などの劇場主体の子供むけ公演が持たれ,専門劇団も姿を見せるようになった。お伽芝居は〈お伽劇〉さらには〈童話劇〉と名称も段階的に近代性を持ち始め,質的にも近代劇の影響を受ける一方,芸術教育運動の高まりに乗って変容していった。大正期から昭和初期にかけての小山内(おさない)薫,久保田万太郎らの劇作活動,また坪内逍遥による児童演劇論の展開は,児童劇に大きな活性を与えた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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