日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファイトクネヒト鉱」の意味・わかりやすい解説
ファイトクネヒト鉱
ふぁいとくねひとこう
feitknechtite
空気中の酸素による酸化でパイロクロアイトから生成された三価のマンガンの水酸化鉱物。グラウト鉱groutite(α(アルファ)-MnOOH)および水マンガン鉱manganite(γ(ガンマ)-MnOOH)とは同質異像関係にある。世界的には産出はまれであるが、日本では岩手県九戸(くのへ)郡野田村野田玉川鉱山(閉山)をはじめ、長野県辰野(たつの)町浜横川鉱山(閉山)、愛知県設楽(したら)町田口鉱山(閉山)など多数の変成層状マンガン鉱床から、高品位鉱の構成鉱物の一つとして、つねに多量のMn2+(二価マンガン)あるいはMn3+(三価マンガン)を含むマンガン鉱石鉱物と共存する。マンガンを含まない鉱物とは共存しない。もっとも普通の共存鉱物は、緑マンガン鉱、パイロクロアイト、ハウスマン鉱、菱(りょう)マンガン鉱など。命名はスイスの化学者で、この相の純粋なものを合成し、その化学的特性をみいだしたファイトクネヒトWalter Feitknecht(1899―1975)にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]