改訂新版 世界大百科事典 「ファラダ」の意味・わかりやすい解説
ファラダ
Hans Fallada
生没年:1893-1947
ドイツの小説家。本名ディッツェンRudolf Ditzen。農場事務員,新聞広告代理業者などをつとめたのち,1932年長編《小さき男よ,さてどうする》を発表。失職した若い元店員とけなげな妻との生活を物語の軸としたこの小説をはじめ,《ひとたびブリキの椀で食った者は》(1934),《狼たちの中のウォルフ》(1937)などの長編小説において,1920年から30年にかけてのインフレーションと失業の時代を,簡潔な文体で生き生きと描き,最も大衆的な人気をもつ作家となった。特別な人物の運命を記すのではなく,多数の登場人物の生活をくりかえし交代させながら描くことによって,おのずから時代・世相の全体が浮かびでるような手法がとられている。第2次大戦後の作品には,小市民の反ナチス運動を扱った《それぞれ一人で死んでゆく》(1947)がある。ほかに《農民と坊主と爆弾》(1930),《酔いどれ》(1950)など。
執筆者:渡辺 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報