メキシコ大統領。M.イダルゴがメキシコの〈独立の父〉とすれば〈建国の父〉に相当する彼は,サポテカ族出身で,13歳までスペイン語を話さなかった。1830年代にオアハカで政界に入り,48年に州知事に就任し,インディオ社会の保護,師範学校創立,軍隊再編成を手がけた。しかし,53年に復活したサンタ・アナによってM.コモンフォルト,M.オカンポら自由主義者とともに国外追放になる。54年にアユトラ革命が起こりJ.アルバレスが革命評議会を樹立したとき,司法長官(1855)に任命され,軍人,教会の特権を廃止した〈フアレス法〉を制定した。57年に連邦制の典型となる憲法が制定されるが,執拗な保守勢力の反対に遭遇するとともに,コモンフォルト大統領との間にもフアレスの急進的政策をめぐって確執が生じた。最高裁長官で副大統領であった彼は,改革運動継続のため58年グアナファトで臨時政府を樹立し,その後各地を転々としながら保守勢力に対抗していった。また,反対勢力との抗争に必要な出費を補うためにあえてアメリカに不利な借款を申し出た。同時にレフォルマ法Leyes de Reforma(1859)を断行し,教会と国家の分離をはかって,教会財産の国有化,教会権力が関与しない婚姻法,戸籍法,墓地法を立案した。M.ミラモンが自由主義派の勢力に敗れると彼は大統領に就任(1861)したが,国会が2ヵ年の対外負債凍結を宣言するに至り,イギリス,フランス,スペイン3国軍隊がベラクルスに上陸し,フアレス打倒に加勢した。フランスがマクシミリアン大公をメキシコ皇帝として擁立(1864-67)すると,臨時政府はパソ・デル・ノルテに移った。サラゴサIgnacio Zaragozaがフランス軍を破り君主政が壊滅すると,67年に大統領に再選され,共和政の勝利を確立する。71年にも再選されたが,このころよりフアレス派,レルド派,ディアス派の3勢力に分かれ,結果的にはP.ディアスの蜂起を招くが,フアレスの死によって一時的に鎮圧された。
→レフォルマ
執筆者:大垣 貴志郎
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メキシコ自由主義革命(レフォルマ)の指導者、大統領(在任1858~72)。南部オアハカ州の貧しい先住民(サポテカ人)の家に生まれ、オアハカで聖職者になるべく教育を受け、やがて弁護士となった。その後自由派の政治家として活躍、1847年には州知事となったが、53年保守派のサンタ・アナに追われてアメリカへ亡命した。54年の自由主義革命を支持し、55年帰国して革命政府の法相に任命され、カトリック教会や軍隊の裁判上の特権を廃止する法律(フアレス法)を公布した。57年には新憲法が制定されたが、同年末これに反対する保守派のクーデターが成功したので、翌58年ベラクルスに臨時革命政府を樹立して大統領に就任、59年には教会財産没収法などを公布して戦いを続け、60年勝利した。しかし62年、外債不払いを機にイギリス、フランス、スペインの3国が軍事介入し、フランス軍は首都を占領してマクシミリアンを皇帝につけたが、フアレスはこれを撃退して独立を守った。戦後は軍備縮小、教育の充実、鉄道建設、自由貿易、民主主義の確立などに努力したが、大統領在任中に病気で急死した。
[野田 隆]
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1806~72
メキシコの自由主義改革の指導者,大統領(在任1858~64,67~72)。オアハカ州土着のサポテカ人で,1848年に州知事となり,先住民社会の保護,教育制度の整備などを行った。アユトラ蜂起ののち司法長官になり,教会,軍隊の特権を廃止する「ファレス法」を制定した。58年からは,自由主義派の大統領として保守派の政府と戦い,マクシミリアンの帝政に抵抗して,帝政壊滅後67年大統領に再選されたが,急進的な共和主義のために,他の自由主義者たちと対立した。71年再選されたが,翌年没した。
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…メキシコ史の用語で〈改革時代〉と訳される。狭義にはメキシコの三年戦争と呼ばれる改革戦争(1858‐61)を指すが,むしろ,1854年A.L.deサンタ・アナ失脚後マクシミリアン皇帝の君主政が崩壊し,B.フアレスが大統領に再選される時期(1867)までの,保守陣営と革新派勢力との一連の闘争時期を意味すると考えるのが妥当である。そのため,レフォルマは相反する主義主張の陣営が,自己の確信する政治理念に従って,メキシコ独立以来の混迷と国土の荒廃状態から脱して,近代国家へ転換するため,建国の礎をいかに完成させるかを模索する苦悩の時代といえる。…
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