改訂新版 世界大百科事典 「フエガラス」の意味・わかりやすい解説
フエガラス (笛鴉)
bell-magpie
currawong
スズメ目フエガラス科の鳥,または同科フエガラス属の鳥の総称,もしくは同属の1種をさす。フエガラス属Streperaはオーストラリア東部に分布するフエガラスS.graculinaなど2~3種よりなり,オーストラリアとタスマニア島に分布している。全長約50cm。全身ほとんど黒色ないし暗灰色で,翼,下尾筒,尾羽などに白色の部分がある。くちばしはじょうぶで長く,先が少しかぎ状に曲がっている。開けた森林や低木林にすみ,繁殖期以外は小群で生活している。食物は昆虫類と果実を主食とし,小型の哺乳類,爬虫類,鳥の雛や卵なども見つけしだいとって食べる。樹上に小枝を集めて皿形の巣をつくり,1腹2~5卵の卵を産む。雌だけで抱卵し,雛は両親が育てる。
フエガラス科は,フエガラス属,カササギフエガラス属Gymnorhina(英名Australian magpie)およびモズガラス属Cracticus(英名Australian butcherbird)の3属よりなり,9~13種に分類される。オーストラリア,タスマニア島,ニューギニア島およびその周辺の島々に分布する。3属とも黒色(または灰色)と白色の羽毛をもった鳥で,習性はみなフエガラスに似ている。しかし,カササギフエガラスとモズガラスは一般にフエガラスより群れで生活する傾向が強く,とくにカササギフエガラスG.tibicenは人家近くや公園にもすみ,オーストラリアではたいへんよく目につく鳥である。また,カササギフエガラスもモズガラスも,すぐれた歌い手として有名である。カササギフエガラスの繁殖生態は独得で,つがいないし10羽前後のグループが繁殖単位となり,グループ繁殖の場合はグループでテリトリーをもち,グループの中の中心的な雄だけが雌と交尾し,雌は営巣,抱卵,育雛(いくすう)のほとんどをひとりでし遂げる。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報