フッ化銀(読み)フッカギン

化学辞典 第2版 「フッ化銀」の解説

フッ化銀
フッカギン
silver fluoride

】フッ化二銀:Ag2F(234.73).粉末の銀をフッ化銀(Ⅰ)水溶液と反応させて濃縮すると得られる.金属光沢をもつ黄色の結晶.密度8.57 g cm-3.電気の良導体.加熱すると100 ℃ で急激に銀とフッ化銀(Ⅰ)に分解する.水に溶かしても同様に銀とフッ化銀(Ⅰ)に分解する.[CAS 1302-01-8]【】フッ化銀(Ⅰ):AgF(126.87).酸化銀または炭酸銀をフッ化水素酸に溶かして蒸発濃縮すると得られる.黄色の結晶.等軸晶系,岩塩型構造.密度5.85 g cm-3融点435 ℃,沸点1150 ℃.潮解性で,水に非常によく溶けることがほかハロゲン化銀と違う.固体はその体積の約800倍のアンモニアガスを吸収する.強力なフッ素化剤,歯科用防腐処置剤などに用いられる.[CAS 7775-41-9]【】フッ化銀(Ⅱ):AgF2(145.87).二フッ化銀ともいう.銀粉硝酸銀,ハロゲン化銀にフッ素ガスを通じ,200 ℃ で反応させると得られる.白色.通常得られるものは黒褐色の粉末.密度4.57~4.78 g cm-3.融点690 ℃.水と反応してフッ化銀(Ⅰ)と酸素フッ化水素を生じる.酸化力が非常に強く,マンガン(Ⅱ)イオンを過マンガン酸イオンに酸化する.非常に吸湿性で,空気中の湿気で簡単に加水分解してフッ化銀(Ⅰ)と酸素とフッ化水素を生じる.酸化剤炭化水素のフッ素化剤として用いられる.[CAS 7783-95-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化銀」の意味・わかりやすい解説

フッ化銀
ふっかぎん
silver fluoride

銀とフッ素の化合物。酸化銀Ag2Oをフッ化水素酸に溶かし、蒸発濃縮させて得られる、無色ないし淡黄色結晶。潮解性で水によく溶ける。アルコールに難溶。無水和物は体積で800倍以上のアンモニアを吸収する。水溶液からは一水和物、二水和物が得られる。

 このほか、フッ化銀の水溶液に銀を溶かして得られる黄色結晶フッ化二銀Ag2F(比重8.57)、銀粉に直接フッ素を作用させて得られる暗褐色のフッ化銀(Ⅱ)AgF2(比重4.7)などもある。

[中原勝儼]


フッ化銀(データノート)
ふっかぎんでーたのーと

フッ化銀
  AgF
 式量  126.9
 融点  435℃
 沸点  1150℃
 比重  5.852(測定温度15.5℃)
 結晶系 立方
 溶解度 182g/100mL(水15.5℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android