改訂新版 世界大百科事典 「フラマリオン」の意味・わかりやすい解説
フラマリオン
Nicolas Camille Flammarion
生没年:1842-1925
フランスの天文学者。5歳のときに日食があり,“水に映った欠けた太陽の姿が心に焼きついた”と後に述懐しているように,フラマリオンは幼時から天文に興味をもった。15歳のとき一家は経済上の理由でパリに出て,フラマリオンも彫金の徒弟奉公に出されたが,夜は夜学に通って勉強し,生来の文才を発揮してやがて〈万有宇宙の生成〉という500枚ほどの原稿を書き上げた。これを知合いの医者が読んだのがきっかけで,パリ天文台長U.J.J.ルベリエに紹介され,1858年,天文台に計算掛として採用された。61年に最初の著書《生物の住む様々な世界》を出版し,その趣味豊かな文体で大評判となったが,厳格なルベリエの不興を買って62年に天文台を辞した。しかしフラマリオンは新聞や雑誌への寄稿,科学雑誌の編集,パリやヨーロッパ諸都市での講演によってその名はあまねく知れ渡った。数多い著書の中で80年刊行の《通俗天文学》はフラマリオンの代表作とされ,各国語に翻訳されてそれまでのどんな天文書にもまして天文学への関心を世界中に広めたという。しかもその一読者がパリ近郊のジュビシーに土地を提供して,83年に口径24cmの屈折望遠鏡を擁する天文台を設立し,火星の観測に取り組むとともにアマチュア天文家にも開放した。以上のような諸活動に加えて,フラマリオンが87年に創立した〈フランス天文協会〉も天文学の普及に貢献し,ここから今世紀フランスの多くの天文学者が輩出した。
執筆者:堀 源一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報