フルマカモメ(その他表記)fulmar
Fulmarus glacialis

改訂新版 世界大百科事典 「フルマカモメ」の意味・わかりやすい解説

フルマカモメ
fulmar
Fulmarus glacialis

ミズナギドリ目ミズナギドリ科の鳥。全長約50cm。カモメよりやや大型の海鳥で,体型は一見カモメ類に似るが,くびと体がずんぐりして太めである。上くちばしの基部に管状の鼻があるのが重要な特徴。羽色は全身すすけた灰色の暗色型と,頭頸とうけい)部と腹が白い淡色型とがある。くちばしと脚は黄色い。北太平洋,北大西洋の北部寒帯域に分布し,日本では北海道の沖合でよく見られる。飛び方はアホウドリ類に似ており,外洋表層に浮遊する動物プランクトンを食べる。漁業廃棄物をも盛んに食べ,よく船に集まって群れる。イギリス沿岸地方で近年繁殖域が広がり,近海の個体数が増加した。その原因は漁業の拡大と廃棄物の量の増加によるとの説もあるが,はっきりしたことはわかっていない。日本では繁殖しないが,島や海岸の崖の棚に巣をつくり1腹1個の卵を産む。若鳥は3~4年間海で過ごし,5~6歳で繁殖地に戻り,7歳から繁殖する。南極海域には近縁ギンフルマカモメF.glacialoidesのほか,大型種オオフルマカモメ類やマダラフルマカモメナンキョクフルマカモメなどがいる。
ミズナギドリ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フルマカモメ」の意味・わかりやすい解説

フルマカモメ
ふるまかもめ / 管鼻
fulmar
[学] Fulmarus glacialis

鳥綱ミズナギドリ目ミズナギドリ科の海鳥。全長約48センチメートルのやや大形種。体は太めで、嘴(くちばし)が太く、翼もいくぶん広めでカモメ類に体形が似るが、鼻の部分が発達した管状になっている点がもっとも異なる。北太平洋・北大西洋の北部寒海域に分布し、島や海岸の崖(がけ)の岩棚に営巣する。外洋の表層に浮遊する動物プランクトンを食べるが、漁業廃棄物も盛んに食べ、船に群れ集まる。近年、数が増えたのは、その廃棄物によるとの説があるが、自然の餌(えさ)にどれくらい依存しているのか不確かなので、議論の余地がある。日本では北海道沖合いの海でよくみられる。羽色が灰褐色のものと青灰色のものと2型がある。若鳥は3、4年海で過ごし、5、6歳で繁殖地に戻り、7歳から繁殖する。南極海域には近縁種のギンフルマカモメのほか、最大種オオフルマカモメ、マダラフルマカモメ、ナンキョクフルマカモメ、ユキドリなどが分布する。

長谷川博]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フルマカモメ」の意味・わかりやすい解説

フルマカモメ
Fulmarus glacialis; northern fulmar

ミズナギドリ目ミズナギドリ科。全長 39~50cm。は比較的短く,体はずんぐりしていて,一見カモメ類に似ているが,の上に管状の鼻孔があり,ミズナギドリの仲間だということがわかる。羽色は全身暗灰色で下面がやや淡い暗色型と,頭部と腹面が白く,背面が灰色の白色型,中間の淡色型のものとがある。嘴は暗黄色か黒褐色で,脚は黄色。北大西洋,北太平洋,北極海の沿岸や島々で繁殖する。日本には冬鳥(→渡り鳥)として渡来し,北日本の海上に生息するが,内陸に飛来することは少ない。

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世界大百科事典(旧版)内のフルマカモメの言及

【ミズナギドリ(水凪鳥)】より

… ミズナギドリ科は大きくつぎの4群に分けられる。(1)フルマカモメ類(英名fulmar)は海の表層で動物プランクトンや魚類,イカ類をとらえて食べる。漁業廃棄物にも集まる。…

【ミズナギドリ(水凪鳥)】より

… ミズナギドリ科は大きくつぎの4群に分けられる。(1)フルマカモメ類(英名fulmar)は海の表層で動物プランクトンや魚類,イカ類をとらえて食べる。漁業廃棄物にも集まる。…

※「フルマカモメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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