日本大百科全書(ニッポニカ) 「フレーム理論」の意味・わかりやすい解説
フレーム理論
ふれーむりろん
マービン・ミンスキーMarvin Minsky(1927―2016)が1975年に提唱した知識表現方式。
画像認識等における人間の認識はトップダウンで行われるが、プログラムでは逆にボトムアップな認識が行われる。フレーム理論では、人間のようにトップダウンの認識を可能にするために、既存の知識をフレームの形にまとめておいて、それを用いて認識や推論を行うことを提唱している。この考え方はスキーマやスクリプトとよばれるものと同じである。ただ、その後の知識表現の歴史では、フレーム理論に基づいた知識表現の仕組みをコンピュータ上に実装するためのフレーム記述言語だけが参照されることが多い。
フレーム記述言語では、個々の知識はフレームとして表現される。フレームは概念のプロトタイプを表現している。概念の属性を表すいくつかのスロットをもち、それに値が入る。この値は典型値であったり、値を得るための手続であったりする。フレームどうしは互いにポインタで指示しあうフレームネットワークを構成しており、あるフレームにいるときに特定の動作をすると、このポインタをたどって別のフレームに到達する。たとえば、ロボットが扉を開けて部屋に入った場合には部屋フレームを使って、それに従い細部の認識を行う。部屋フレームには、部屋には壁や天井、床、家具などがあることがスロットとして記述されている。ロボットはそれに従い、個々のスロットの値を観察によって埋める。ボトムアップに部屋であることを認識するのではなく、まず部屋だとわかったうえで細部を観察するのである。
[中島秀之 2019年9月17日]