日本大百科全書(ニッポニカ) 「スクリプト」の意味・わかりやすい解説
スクリプト
すくりぷと
script
一般用語としては台本のことであるが、人工知能(AI)の文脈では、対話などで伝えられる意味内容の雛形(ひながた)をさす。心理学でスキーマとよばれるものも、これとほぼ同義である。一連の行為のまとまりとして記述されるという意味では台本とよんでも差し支えない。たとえば「レストラン」スクリプトでは、入店して、着席し、注文の後、出てきた料理を飲食し、会計を済ませて店を出るというようなことが記述される。われわれが外国のレストランに行ったときなど、ウエーターの質問順序に関するスクリプトをもっていれば多少聞き取れなくても対応が可能である。
ロジャー・シャンクRoger Schank(1946―2023)は自然言語の理解に厳密な文法解析は不要であり、スクリプトがあればそれを用いた処理が可能であると主張した(スクリプト理論)。実際われわれもキーワードだけで会話していることが多いのだが、スクリプトにないような常識的でないことや、論文のような複雑な思考を伝えるには、やはり文法が必要である。
[中島秀之 2019年8月20日]