家庭医学館 「ブドウ球菌食中毒」の解説
ぶどうきゅうきんしょくちゅうどく【ブドウ球菌食中毒】
ブドウ球菌の混入した食品が、適当な温度と湿度のところで保存されると、ブドウ球菌は盛んに繁殖して、毒素を生産します。
この食品を摂取すると、すでに毒素ができているので短い潜伏期間(摂取後、1~4時間)で発病します。
気温と湿度の高い夏から初秋にかけて多発します。
[症状]
多くは、急な吐(は)き気(け)、2~3回の嘔吐(おうと)、強い上腹部の痛みで始まります。やや遅れて水様性の下痢(げり)が2~3回あるのがふつうですが、下痢のおこらないこともあります。
病気の期間は短く、ふつう、半日~1日で治りますが、数時間で回復することもあります。
ときに、嘔吐と下痢が激しく、血便(けつべん)になったり、脱水で血圧が低下し、くちびるや手足が蒼白(そうはく)になることもあります。
いずれにしても、発熱しないのがこの食中毒の特徴です。
[治療]
とくに、治療を必要としない軽症のことが多いのですが、症状が強く、胃に食物が残っている時期であれば、吐かせたり、胃洗浄(いせんじょう)をします。胃になにも残っていない時期であれば、下剤を使って毒素の排出(はいしゅつ)をはかり、脱水に対し輸液を行ないます。毒素型食中毒ですから、抗菌性(こうきんせい)の薬剤は使いません。
[予防]
ブドウ球菌は、人の鼻や咽頭(いんとう)、化膿(かのう)した傷などにいますから、調理をするときに、唾液(だえき)が食品にとびちらないようにし、手に傷のある人は指サックを使うようにします。
食材は低温保存してブドウ球菌の増殖(ぞうしょく)を防ぎ、調理した食品は早く食べてしまいましょう。なお、ブドウ球菌の毒素は耐熱性(たいねつせい)で、煮なおしても安全とはいえません。