ブラスウェイト(読み)ぶらすうぇいと(その他表記)Edward Kamau Brathwaite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラスウェイト」の意味・わかりやすい解説

ブラスウェイト
ぶらすうぇいと
Edward Kamau Brathwaite
(1930―2020)

バルバドス詩人、歴史家、エッセイスト。ジャズにも造詣(ぞうけい)が深い。ケンブリッジ大学で歴史学を修め、サセックス大学で「ジャマイカクレオール社会研究」というテーマで博士号を取得し、ガーナで数年間教えたのち、1962年に帰国。翌1963年に西インド大学史学科講師となり、1982年に社会文化史学科教授に就任。このころから、カリブ海域を代表する詩人・歴史家という評価が高まった。のち「カリブ海域芸術家運動」(CAM:Caribbean Artists Movement)の中心人物として活躍。そのほか文芸雑誌『サバクウ』の編集や講演など、活動範囲は広い。1991年にアメリカに渡り、翌1992年にニューヨーク大学比較文学科教授に就任。詩集『通行権』(1967)、『仮面』(1968)、『島々』(1969)の三部作、『渡来者たち――新世界三部作』(1973)で、カリブの民の精神的収奪アフリカの「偉大なる伝統」への回帰、魂のいやしと創造力によるカリブの民の新たな船出を歌い上げた。ほかに詩集『母の詩』(1977)、『太陽の詩』(1982)、『第三世界の詩』(1983)、『X――自我』(1987)、『シャー』(1990)、『中間航路』(1992)などがあり、これらの詩で、アフリカから奴隷として連れてこられたカリブ海域住民が受けた汚辱と暴力の歴史と、自らのルーツの検証、新しい未来への希望を、憤怒(ふんぬ)と抵抗、ときには幻滅を交えながら、ジャズ、カリプソレゲエリズムを駆使して謳(うた)った。なお、亡き最愛の妻ドリスに捧(ささ)げた詩集『ゼア――メキシコ日記』(1993)には、挫折(ざせつ)感・空漠感・虚無感が色濃くにじむ。また、歴史書『ジャマイカ奴隷の民俗文化』(1970)、『矛盾する兆候群』(1974)、『声の歴史』(1984)は、クレオール文化研究の貴重な資料となっている。

[土屋 哲]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラスウェイト」の意味・わかりやすい解説

ブラスウェイト
Brathwaite, Edward Kamau

[生]1930.5.11.
バルバドスの詩人,歴史学者。 1949年ケンブリッジ大学で歴史学と教育学の学位を取得する。 55年から7年間ガーナで教育行政を担当,これは西インド諸島とアフリカの文化を比較考証する貴重な体験となった。のち歴史学教授として西インド大学とアメリカの大学で教えながら,雑誌『ビム』の編集に従事。3部作の詩集『移送の権利』 Rights of passage (1967) ,『仮面』 Masks (68) ,『島々』 Islands (69) では,ジャズとフォークのリズムを駆使してカリブの自然の美しさとカリブの民の苦しみの歴史を歌い,さらにみずからのルーツの検証を試みながら未来への希望を奏でている。歴史学の著作や評論も多い。

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