ブラッシノキ(その他表記)Callistemon speciosus (Sims.) DC.

改訂新版 世界大百科事典 「ブラッシノキ」の意味・わかりやすい解説

ブラッシノキ
Callistemon speciosus (Sims.) DC.

枝先に多数の花をつけ,それより濃赤色の糸状のおしべブラシのように密に開出して美しいフトモモ科の常緑低木。原産地オーストラリア。高さ2~4.5mになり,葉は長さ10cmくらいで披針形をなし,やや厚くて硬い。花弁は5枚で小さく,開花後早く脱落する。おしべは多数あって,長い。果実球形で径1cmくらい,枝の周囲に多数密着して木化し,永年脱落しないで残る。その姿は虫の卵のように見え,内部にごく小さな種子が多数詰まっている。数年経過すると種子は飛び散る。

 カリステモンCallistemon英名bottle brush)のうち,よく観賞されるものには,マキの葉に似た葉をつけるマキバブラッシノキC.rigidus R.Br.,黄白色の花をつけるシロバナブラッシノキC.salignus(Sims.)DC.,美しい花をつけるハナマキC.lanceolatus DC.などがある。繁殖は実生のほか挿木,取木で行う。木はじょうぶで作りやすい。排水のよい乾燥地を好む。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラッシノキ」の意味・わかりやすい解説

ブラッシノキ
ぶらっしのき
bottle brush
[学] Callistemon speciosus (Sims) DC.

フトモモ科(APG分類:フトモモ科)の常緑低木または小高木。高さ3~6メートル。枝はやや細く、曲がりやすい。葉は互生し、披針(ひしん)形で長さ4~8センチメートル、先はとがり、全縁で革質。新葉は絹毛がある。5~6月、新枝の下部に長さ10~15センチメートルの穂状花序をつける。萼片(がくへん)、花弁ともに5枚で小さい。雄しべは約50本、濃紅色で美しく、長さ約3センチメートルの長い花糸が目だつ。果実は枝の周囲に虫の卵のように多数つき、扁平(へんぺい)な球形で径約6ミリメートル、上部はへこみ、褐色に木質化して、いつまでも落ちない。オーストラリア原産。名は、英名のボトル・ブラッシュと同じ意味で、花序が瓶を洗うブラシに似るのでいう。

 本属の植物はカリステモンまたはブラッシノキとも総称され、オーストラリアに約40種分布する。日本には明治中期に数種が輸入された。ほかに、葉が線形または狭披針形で細く、花は濃紅色のマキバブラッシノキやハナマキ(キンポウジュ)などが、観賞花木として栽培される。繁殖は実生(みしょう)、挿木、取木により、実生の場合は2~3年目の枝の果実がよい。関東地方南部以西の暖地で栽培し、日当りのよい、やや乾いた所が適地である。

小林義雄 2020年8月20日]


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百科事典マイペディア 「ブラッシノキ」の意味・わかりやすい解説

ブラッシノキ

学名をカリステモン・スペシオサスという。オーストラリア原産のフトモモ科の常緑低木。暖地の庭木や切花用に植栽。高さ2〜3mになり,葉は披針形で中脈が目立つ。花は5〜6月,びんを洗うブラシに似た形の穂状に集まって咲く。萼(がく)は5裂し花弁は5個あるが,萼裂片も花弁も早落性で,多数あるおしべの著しく長い赤い花糸がよく目立ち美しい。果実は虫の卵のように枝の周囲にかたまってつく。同属の,花糸が淡黄色のシロバナブラッシノキほか数種も栽培されている。実生(みしょう),挿木,取り木でふやす。

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