ブルートレイン(読み)ぶるーとれいん(英語表記)blue train

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルートレイン」の意味・わかりやすい解説

ブルートレイン
ぶるーとれいん
blue train

濃い青色車体を塗った寝台特急列車愛称

 本来のブルートレインはフランスのワゴンリー社所有の豪華寝台列車が最初であるが、現存していない。1945年、南アフリカ連邦(現、南アフリカ共和国)はケープ・タウン―プレトリア間にて超豪華寝台列車の運転を始め、車体をブルーに塗装して列車名もブルートレインと称した。この列車は、乗り心地がよく、寝室の設備、食堂のメニューなども、旅行案内書としてもっとも権威のある『ミシュラン・ガイド』で最上級に格付けされるホテルに相当する格調があるとされ、この列車に乗るために客が世界中から訪れるほど有名になっている。客車は南アフリカ共和国のユニオン・キャリッジ(現、CTE)社製であるが、装置・部品は世界各国の粋を集め、日本からも住友金属工業(現、日本製鉄)製の空気ばねが採用されて乗り心地のよさに一役買っている。2017年時点での編成客車は3代目で、今日の鉄道技術の最高水準としての機能を誇る世界の代表的な寝台列車である。

 日本のブルートレインは1958年(昭和33)10月1日、東京―博多(はかた)間の特急「あさかぜ」が最初である。南アフリカ共和国のブルートレインには及ばないが、新造の専用客車を採用し、長距離寝台特急列車として高い水準に達していた。1970年代から夜行長距離列車の削減が行われ、2005年(平成17)には「あさかぜ」(東京―下関(しものせき))、「さくら」(東京―長崎)、「彗星(すいせい)」(京都―南宮崎)が、2006年には「出雲(いずも)」(東京―出雲市)が、2008年には「なは」(京都―熊本)、「あかつき」(京都―長崎)が、2009年には「富士」(東京―大分)、「はやぶさ」(東京―熊本)が、2014年には「あけぼの」(上野秋田―青森)が、2015年には「北斗星」(上野―札幌)が廃止された。

 これらのほか、「トワイライトエクスプレス」(大阪―札幌)および「カシオペア」(上野―札幌)も、1988年3月の青函(せいかん)トンネル開業以降に、機関車牽引(けんいん)の客車列車として登場した夜行列車サービスであった。いずれも個室寝台と食堂車等の豪華設備が売り物であり、列車に乗ること自体を商品化した。なお、「トワイライトエクスプレス」は2015年3月に定期列車としての運行を廃止し、臨時運行のツアートレインとして運行していたが、2016年3月に廃止された。「カシオペア」は2016年3月に定期運行を終了し、その後は「カシオペアクルーズ」「カシオペア紀行」などの名称で、臨時運行のツアートレインとして運行されている。これらの夜行列車や、クルーズトレインとよばれる「ななつ星 in 九州」などの豪華観光寝台列車は、その塗色がブルーではないので、もはやブルートレインとよぶことはむずかしいといえよう。

[西尾源太郎・佐藤芳彦 2017年10月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルートレイン」の意味・わかりやすい解説

ブルートレイン

JRの長距離寝台列車・夜行特急列車の愛称。電気またはディーゼルの機関車に牽引される客車の車体が青色で塗装されたことからこう呼ばれる。1958年,「あさかぜ」が初めて寝台特急列車用の 20系客車を使用して東京―下関で運行され,「ブルートレインの元祖」といわれる。東京―鹿児島の「はやぶさ」,東京―長崎の「さくら」,東京―出雲市の「出雲」,上野―青森の「あけぼの」,京都―熊本の「なは」,京都―長崎の「あかつき」などが運行された。その後,新幹線や航空路線の整備によって多くの路線が廃止されるなか,1988年3月に青函トンネルが開通したことにより,上野―札幌に「北斗星」,1989年には大阪―札幌に「トワイライトエクスプレス」が登場。豪華な客車とサービスで人気を集めた。

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