日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレ・コロンビア美術」の意味・わかりやすい解説
プレ・コロンビア美術
ぷれころんびあびじゅつ
コロンブスによる「新大陸発見」(1492)以前のアメリカ大陸における、メソアメリカ、アンデス、環カリブ海の3地域を主体とするインディオ文化美術。形成期、古典期、後古典期に大別される。
[深作光貞]
形成期
紀元前2500年ごろからトウモロコシ栽培が始まったメソアメリカにおける最初の高文化は、巨石人頭像で有名なオルメカ文化で、後のメソアメリカ文明の母体となる。一方、中央アンデスではコトシュに神殿がつくられ、ネコ科動物がモチーフのチャビン文化が建築、石彫、土器などに怪奇な美を展開した。
[深作光貞]
古典期
メソアメリカでは、大ピラミッドを並べたテオティワカン、モンテ・アルバン、骨壺(こつつぼ)で特徴のあるサポテカ、壁龕(へきがん)ピラミッドをつくったベラクルス、華麗で高度なマヤなどの各文化が栄えた。アンデスでは、土器に優れたモティーカ、土器と織物のナスカとパラカス、大石造神殿都市ティアワナコなどの各文化が、みごとな美術を競い合っている。
[深作光貞]
後古典期
軍国期に入ったメソアメリカでは、トルテカ文化がマヤ文化と複合し、後古典期マヤ文化をつくったが、石組みモザイクに優れたミシュテカ文化とともにアステカ文化に統合された。アンデスでは、チムー、チャンカイ、ワリの各文化が、のちにインカ文明に集成された。環カリブ海文化圏では、この二大地域の文化に比較すると文明度と規範において劣るが、土器とユニークな金属加工、とくに金細工が発達し、美しい作品を残している。
[深作光貞]