日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレトリア」の意味・わかりやすい解説
プレトリア
ぷれとりあ
Pretoria
南アフリカ共和国の行政上の首都。ハウテン州(旧トランスバール州)中央部の標高1400メートルの高地に位置する。人口110万4479(1996)、74万1651(2011センサス)。同国最大の都市ヨハネスバーグの北東約60キロメートルにあり、立法上の首都ケープ・タウンとは約1600キロメートルの鉄道で結ばれる。1835年に、ブーア人(オランダ系)の内陸大移動(グレート・トレック)によって建設され、その指導者プレトリウスAndries Wilhelmus Jacobus Pretorius(1799―1853)にちなんで命名された。1860年トランスバール共和国の首都となったが、第二次ブーア戦争(1899~1902)の際にはイギリス軍に占領された。1910年の南アフリカ連邦発足(1961年共和国となる)とともに連邦の行政府が置かれた。28年南アフリカ鉄鋼公社(ISCOR)が設立されてからは、鉄鋼およびその関連工場が増加し、ヨハネスバーグを中心とする工業地帯の北端となっている。
市街は周囲を山に囲まれた盆地にあり、市の南東部をアビース川が流れる。市の中心はチャーチ・スクエア(広場)で、トランスバール共和国元大統領クリューガーの立像があり、広場の周囲にはフォルクスラート・ビル、南アフリカ準備銀行、中央郵便局などの歴史的建物が並んでいる。また行政の中心地であるため官庁が多く、とくにメインキスコップ(丘)にそびえるユニオン・ビルは、1910~13年にH・ベイヤー卿(きょう)が設計したギリシア風大建築で、現在は大蔵省と外務省になっている。ほかにプレトリア大学、南アフリカ大学、トランスバール博物館、バーガーズ公園などがある。また市の南方6キロメートルの丘の上には、グレート・トレックの記念碑である大石造建築のフォール・トレッカーズ・モニュメントがある。南方54キロメートルにヨハネスバーグと共同のヤン・スマッツ国際空港がある。
[林 晃史]