元来はラテン語の平民plebsの議決scitumを意味する言葉で,近代においてはフランスで普及し,ドイツその他に広がった用語である。人民投票と訳されることが多い。広義にはレファレンダム,国民投票と同義に用いられるが,区別して用いる論者も少なくない。すなわち,この言葉は,まず第1に領土の併合変更などに際して領土の帰属を国民または当該地域の住民の投票によって決定するような場合に使われた。たとえば,サボア(1792),ニース(1793),シチリアおよびナポリ(1860)に関するプレビシットをはじめ,第1次大戦後に民族自決の原則にもとづいておこなわれた,上シュレジエンやザールに関するプレビシット,あるいはヒトラーによっておこなわれたオーストリア合併に関するプレビシット(1938)などがその例である。第2には,クーデタなどによって政権を掌握した者がその権力の正統性を獲得するために国民の信任投票を要求する場合に使われた。たとえば,ナポレオンによるもの(1802),ナポレオン3世によるもの(1851),あるいはヒトラーによるもの(1933,34)などがその例である。そこで,プレビシットとは超法規的な政治手続としておこなわれる非常時の国民の投票であり,またもっぱら権力者側の発意でおこなわれ,さらに選挙に代替する信任投票にも使われた。このような由来から,レファレンダム,国民投票とは異なるものとして,両者を区別すべきであるとする見解が生まれることとなった。
執筆者:西尾 勝
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直接民主制の一形態で,人民投票または直接国民投票と訳される。二つあり,一つは,領土変更の帰属の決定などの場合で,例えば,第一次世界大戦後の上シュレージエンやザール地方などで行われた(オプション)。他は,通常の手続きでは立法できないような国の基本的事項の変革に際し,権力の正統性を得るために行われる場合で,例えば,フランスのナポレオン3世による第二帝政の樹立やヒトラーの総統就任がある。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…憲法の改正,法律の制定,重要案件の議決などについて,立法機関の議決をもって最終決定とせず,有権者の投票によって最終決定とする国民投票ないし住民投票の制度であり,イニシアティブ(国民発案)とともに直接立法制度の一形態,直接民主制の一形態である。レファレンダムと類似のことばとして,プレビシットplebisciteがあり,両者の異同が論じられる。歴史上,プレビシットの名で行われた投票には次のようなものがある。…
…憲法の改正,法律の制定,重要案件の議決などについて,立法機関の議決をもって最終決定とせず,有権者の投票によって最終決定とする国民投票ないし住民投票の制度であり,イニシアティブ(国民発案)とともに直接立法制度の一形態,直接民主制の一形態である。レファレンダムと類似のことばとして,プレビシットplebisciteがあり,両者の異同が論じられる。歴史上,プレビシットの名で行われた投票には次のようなものがある。…
※「プレビシット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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