非常時(読み)ひじょうじ(英語表記)national emergency

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

非常時
ひじょうじ
national emergency

国内的または国際的に重大な危機に直面したときをいう。日本では 1930年代前半,満州事変国際連盟脱退,ワシントン条約廃棄などにより国際的に孤立し,国内では経済恐慌が深まるなかで血盟団事件,五・一五事件などが相次ぎ,この言葉が盛んに用いられた。非常時は,軍部の政治的進出,軍備増強,革命運動弾圧や思想統制の強化など,体制の軍国主義化,全体主義化を促す心理的基盤となった。 30年代後半には,外にはロンドン軍縮会議脱退,日独防共協定締結,内には二・二六事件,軍部大臣現役武官制の復活などが起り,むしろ準戦時体制へと移行した。ナチズムにおいても「非常事態」について多くの議論がなされた。

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デジタル大辞泉の解説

ひじょう‐じ〔ヒジヤウ‐〕【非常時】

非常の事態が起こった時。「非常時の脱出口」
国家的、国際的に重大な危機に直面した時。「国家の非常時

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精選版 日本国語大辞典の解説

ひじょう‐じ ヒジャウ‥【非常時】

〘名〙
① 事変など非常の事態が起こったとき。
② 国家的または国際的に重大な危機に直面したとき。特に、戦争などの異常な事態にあるとき。
※休憩時間(1930)〈井伏鱒二〉「かかる非常時に於ては季節をうたふ詠歎や描写は、私達の感覚的原子を満足させなかったからである」

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世界大百科事典 第2版の解説

ひじょうじ【非常時】

1932年の五・一五事件後に危機意識をあおり,国民を国家総力戦体制に動員する地ならしをおこなうために用いられた流行語。この言葉は,満州事変勃発後における日本の国際的孤立化,血盟団事件や五・一五事件などの政治テロの横行農業恐慌の深刻化,労農運動の継続など,内外の危機的状況を包括的にあらわす言葉として用いられ,斎藤実・岡田啓介両内閣をはじめ,軍部・右翼ジャーナリズムなどによって高唱された。具体的には内政面では政党政治否認,軍部と新官僚の発言権強化の容認,農山漁村経済更生運動による農民の組織化など,国際面では反中国・反国際連盟を中心とする排外主義の高唱,ワシントン海軍軍縮条約の期限切れを理由とする〈1935,36年の危機〉説の宣伝と軍備拡張の主張など,思想面では国体明徴運動にみられるような天皇崇拝と日本主義国体論による国民の思想統一などが,いずれも〈非常時〉の合言葉のもとにおこなわれた。

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