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ヘイダック(読み)へいだっく(その他表記)John Hejduk

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘイダック」の意味・わかりやすい解説

ヘイダック
へいだっく
John Hejduk
(1929―2000)

アメリカの建築家。ニューヨークに生まれる。1947~1950年ニューヨークのクーパーユニオンで学んだ。その後、1952年にシンシナティ大学建築学科を卒業、1953年にハーバード大学大学院を修了した後、フルブライト奨学生としてローマ大学に留学し、ピエール・ルイジ・ネルビに師事した。

 1954~1956年テキサス大学オースティン校で教鞭をとる。このときの同僚にコーリン・ロー、ロバート・スラツキーRobert Slutzky(1929―2005)がいた。その後、I・M・ペイの事務所などで働いた。1964年からクーパー・ユニオンで教鞭をとり、1965年にはニューヨークで独立して仕事を始める。1975年にはクーパー・ユニオンの建築学部長となり、自ら校舎の改修設計を行う。2000年の亡くなる前月まで学部長、教授として教鞭をとった。クーパー・ユニオンでの教え子にはエリザベス・ディラーElizabeth Diller(1954― )などがいる。

 建築家としてのヘイダックは通例の創作形態をとらなかった。数多い作品のほとんどは理論的なプロジェクトをドローイングの形式で、詩や個人的な物語に結びつけて表現された。

 初期には、アクソノメトリック図(上から見おろした形で内部空間を説明する図法)の特性を生かしながら、空間と形態の点、線、面、ボリュームの関係を純粋に幾何学的な関係に置き換え、その統辞法を分析した。正方形円形を4分の3や2分の1に分割して組み合わせた「ハウスNo.10」(3/4シリーズ)、「ワン・ハーフ・ハウス」(ともに1966)、さらに、テキサス大学における学生の課題に端を発する、グリッド格子)、フレーム枠組み)を探求した「九つの正方形の問題」のシリーズやグリッドを45度傾けた「ダイヤモンド・ハウス」(ともに1967)のシリーズなどで、空間と形態の原理を追求した。

 ヘイダックは、1972年に出版された建築家5人(P・アイゼンマン、M・グレイブズ、C・グワスミイCharles Gwathmey(1938―2009)、J・ヘイダック、R・マイヤー)の作品集『ファイブ・アーキテクツ』 により、注目を集め世界的に知られるようになった。この5人の作品の多くに、ル・コルビュジエのとくに初期の住宅に見られる、白い平滑な壁体を用いて建築空間を構成しようとする共通性があったため、彼らは「ホワイト派」とよばれた。しかし他の4人と異なり、ヘイダックの作品は、実現を目ざしたわけではない、理論的なプロジェクトであった。

 1973年には、チューリヒ連邦工科大学でアルド・ロッシとの合同展を行った。

 その後も、ヘイダックは、限定されたテーマとそのバリエーションを追求したが、やがて抽象的なものへの関心は人間的なものへと移り、仮面、悪魔、犠牲、自殺、死、墓、霊廟など寓意性をもった作品を制作した。数少ない実施作品である、ベルリン集合住宅(1988)とテーゲル集合住宅(1988、ベルリン)では、立面に人間の顔を連想させる形態が表現された。ほかに、建築というよりは絵画、彫刻とよぶべき作品も数多く制作した。ニューヨークにて没。

[秋元 馨]

『Architectures in Love; Sketchbook Notes (1995, Rizzoli, New York)』『John Hejduk, 7 Houses, IAUS Vol. 12 (1980, The Institute for Architecture and Urban Sutudies, New York)』『John Hejduk, et al., eds.Education of an Architect (1988, Rizzoli, New York)』『特集「ジョン・ヘイダック」(『a+u』1975年5月号、2002年1月号・エー・アンド・ユー)』『Dhiru A. Thadani ed.Five Architects; Twenty Years Later School of Architecture (1992, College Park, Maryland)』『Alexander CaragonneThe Texas Rangers Notes; From the Architectural Underground (1994, MIT Press, Cambridge)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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