ヘビウ

改訂新版 世界大百科事典 「ヘビウ」の意味・わかりやすい解説

ヘビウ (蛇鵜)

ペリカン目ヘビウ科Anhingidaeに属する鳥の総称。英語でdarter,米語でanhingaという。ヘビウは分類学上ウに非常に縁が近く,ウ科に分類されることも少なくない。新旧両世界の熱帯地方と南半球に1属2種が分布する。全長85~90cm。羽色は全体に黒く,背中に白い模様がある。体型もウに似ているが,体つきがウより細長く,とくにくびが長い。解剖学的には,頸椎(けいつい)の関節などに特徴がある。ヘビウの名は,体を大部分水中に沈ませ,曲がった細長いくびを出して泳ぐ姿がヘビを思わせることからつけられた。波の静かな内陸湖沼河川にすみ,潜水してひそかに魚に接近し,鋭いくちばしで突き刺してとらえる。このため,くちばしはウのように先端がかぎ状でなく,細長くまっすぐで,先がとがる。獲物はすべて淡水魚類や小動物である。ヘビウは完全に内陸生で,海にはすんでいない。繁殖期にはサギやウなどの仲間といっしょになり,水辺の林や安全な島に集まって,集団繁殖する。巣は木の上につくられることも,地上にあることもある。1腹3~6個の卵を産む。雌雄とも抱卵,育雛(いくすう)に従事する。

 熱帯アフリカ,南アジアオーストラリアに分布するのはナンヨウヘビウAnhinga melanogasterで,この種は頭頸部が雌雄とも褐色である。アメリカ合衆国南部以南の熱帯アメリカに分布するアメリカヘビウA.anhingaは雄の頭頸部が黒い。習性は互いによく似ている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘビウ」の意味・わかりやすい解説

ヘビウ
Anhingidae; darters, anhingas

カツオドリ目ヘビウ科の鳥の総称。全長 80~100cm。4種からなり,南北アメリカ,アフリカ中東から東南アジアニューギニア島からオーストラリアに 1種ずつ生息する。体形羽色によく似ているが,ウより頸が長く,体も細長い。の先端はウのようにかぎ状ではなく,とがっている。羽色は一般に黒色暗褐色。川や湖沼など淡水に生息する。潜水して魚類を嘴で突き刺し,水面に浮上して空中に放り上げ,それをくわえとって食べる。羽毛は多くの鳥と違って防水用の脂の出る尾腺の発達が悪く,水に入るとびしょ濡れになる。そのため,浮力を失って体の大部分が水面に沈み,頭と頸だけ出して泳ぐが,潜水はしやすい。集団繁殖し,樹上に営巣する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘビウ」の意味・わかりやすい解説

ヘビウ
へびう / 蛇鵜
darter
anhinga

鳥綱ペリカン目ヘビウ科に属する水鳥の総称。この科Anhingidaeの仲間は、全長約86~91センチメートル、大形で体は細長く、黒色または暗褐色、尾は硬く長い。翼は細く先がとがり、短く水かきのある足は最後部につく。嘴(くちばし)は細く鋭くとがり、頸(くび)は細く非常に長い。潜水してそっと魚に近づき、嘴で突き刺してとらえる。体をほとんど水中に沈め、曲がった細長い頸を出して泳ぐ姿がヘビに似ているのが名の由来である。世界の暖帯・熱帯の内陸湖沼や河川にすむ。サギ・ウ類などの水鳥とともに水辺の樹上や地上で集団をなして営巣する。アフリカヘビウAnhinga rufa、アジアヘビウA. melanogaster、オーストラリアヘビウA. novaehollandiae、アメリカヘビウA. anhingaの4種が知られるが、分類の取扱いは人によって異なる。

[長谷川博]

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