精選版 日本国語大辞典 「う」の意味・読み・例文・類語
う
〘助動〙 (活用は「◯・◯・う・う・◯・◯」。助動詞「む」の変化したもの。古くは、「む」と同様、すべての活用語の未然形に付いたが、現代では五段活用の動詞、形容詞「…かろ」、形容動詞「…だろ」、助動詞「ます」「です」「た」「だ」の未然形に付く。→よう)
① 話し手の意志、決意を表わす。…しよう。
※和泉式部続集(11C中)上「音せうといひたる人の音せねば」
※平家(13C前)五「五畿内一の悪党二人、にげ籠りて候ひしを、よってからめうど申す者も候はざりしに」
② 現在、または未来の事柄について、話し手の推量を表わす。…だろう。
※史記抄(1477)四「今まで万年なりと心得てはわるからうそ」
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)中「さぞ馬上がさむからふ」
③ 相手に対する勧誘、または命令的な意を表わす。…しよう。…しろ。
※虎寛本狂言・目近(室町末‐近世初)「おのれ憎いやつの。あちへうせう」
※歌舞伎・傾城江戸桜(1698)中「サア、参りませう」
④ 当然、適当の意を表わす。…のはずだ。…して当然だ。…のがよい。
※両足院本毛詩抄(1535頃)一「公族を前に云はう事なれ共、匀にたよりするそ」
※浄瑠璃・心中宵庚申(1722)下「何からせうやら気がうろつく」
⑤ (連体修飾または準体法として) 未来のこと、仮説について一種婉曲の心持ちを加える。
※梁塵秘抄(1179頃)二「慈尊の出でたまはう世に参り会はむ」
※中華若木詩抄(1520頃)上「洛陽の春と云はうはこの山中の花そ」
⑥ (「…うか」の形で) 疑問、質問、反語の意味を表わす。「こんなものが役に立つだろうか」
⑦ (「…うとす(る)」の形で) 動作、作用の行なわれる直前の状態であることを表わす。「会はもう終わろうとしていた」
※天草本平家(1592)三「ウマヲヒキヨセ deô(デウ) to(ト) セラレタトキ」
⑧ 条件を仮定し、それに逆接的な動作、作用が続く。「だれが止めようと私は行く」
⑨ (「も…うに」「…うものを」などの形で) ほかの可能性も考えられるのに、とある事柄を非難する前置き的用法。「事もあろうに、教師が盗みを働くとは」
[語誌](1)助動詞「む」が唇の破裂音を略して鼻母音化し、さらに鼻音の要素を脱して単なる「う」となった。鎌倉から室町時代に一般化した。
(2)「う」は、前の母音と融合して長音化する。中世末期以降、一、二段動詞などに接続する場合には「生きう→生きょう」「上げう→上ぎょう」のように前の音節と融合して拗長音に発音され、やがて「よう」が独立するに至った。また、四段動詞に接続する場合は前の音節と融合して、ともにオ段長音に発音され、さらに「浄・冥途の飛脚‐上」の「手形戻そと申さる」(↑戻そう)や「浮・好色五人女‐一」の「茶のもといへば」(↑飲もう)のように短音節化する場合がある。
(3)一八世紀の後半頃から、終止連体形に接続した「だろう」が推量表現に用いられるようになると、「う」「よう」は意志を表わす用法に偏るようになった。
(2)「う」は、前の母音と融合して長音化する。中世末期以降、一、二段動詞などに接続する場合には「生きう→生きょう」「上げう→上ぎょう」のように前の音節と融合して拗長音に発音され、やがて「よう」が独立するに至った。また、四段動詞に接続する場合は前の音節と融合して、ともにオ段長音に発音され、さらに「浄・冥途の飛脚‐上」の「手形戻そと申さる」(↑戻そう)や「浮・好色五人女‐一」の「茶のもといへば」(↑飲もう)のように短音節化する場合がある。
(3)一八世紀の後半頃から、終止連体形に接続した「だろう」が推量表現に用いられるようになると、「う」「よう」は意志を表わす用法に偏るようになった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報