ヘラムシ

改訂新版 世界大百科事典 「ヘラムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘラムシ (篦虫)

等脚目ヘラムシ科Idoteidaeの甲殻類総称。ヘラムシの体は名のように背面より見ると,ほぼ長楕円形または長方形をしており,背腹に扁平。甲皮はよく石灰化して固い。頭部,胸部7節およびこれに続く腹節は種類によって異なるが,かなりの程度に尾節と融合しており,長大な板状の腹尾節をつくる。約600種以上が知られ,そのほとんどは海産で,浅海から深海まで生息している。淡水域からもごく少数の種類が知られている。日本産のヘラムシ科には次のような種類がある。ヤマトヘラムシPentidotea japonicus体長25~45mmで細長く,緑色褐色など体色に種々の変化が見られ,腹尾節の形にも変化がある。北海道以北の海岸分布する。イソヘラムシCleantiella isopusは体長20~30mm,前種より幅広く,黄色,緑色,濃褐色など体色の変化があり,腹尾節にも形態の変化が見られる。北海道以南の海岸に分布し,前種同様海藻の間や石の下などにふつうに見られる。ホソヘラムシCleantis planicaudaは小型で,細長く,体長7~20mm,暗褐色の地に4~6条の黒色の縦線がある。本州の浅海にふつうに見られる。ナガレヘラムシIdotea metallicaは体長12~27mm。流れ藻や流木,浮漂物などに付着しており,世界共通種である。ヤリホヘラムシSymmius caudatusは体長13~18mm。淡褐色で,体前部は卵形,全体は槍の穂先に似た形をしている。本州の水深20~250mくらいの砂泥底にふつうに生息している。深海生のオニナナフシ科のオニナナフシArcturus crassispinisは体長4cmくらい。褐色または暗褐色で,細長く円筒形をして,背側に曲がり,第2触角が長大で,体長以上である。日本近海の水深100m前後の深所に生息している。これに近似のAntarcturus ultraabyssalisは日本海溝付近の水深7190~7280mの深海底から採集されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘラムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘラムシ
sea centipede

軟甲綱等脚目ヘラムシ科 Idoteidaeとしてまとめられる種類の総称。体長 1~2cm,幅はその 3分の1から 4分の1ほど。体は背腹に扁平で,へら状。一般に淡褐色から暗褐色のものが多いが,生息場所により赤褐色や鮮かな緑色の個体も見られる。オホーツクヘラムシ Idotea ochotensis,イソヘラムシ Cleantiella isopus など潮間帯の石の下や海藻の間に多いが,ナガレモヘラムシ I. metallica のように流れ藻について世界に分布を広げているものや,ヤリボヘラムシ Symmius caudatus などのように水深 20~250mの砂泥中にすむ種も知られている。(→甲殻類節足動物等脚類軟甲類

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘラムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘラムシ
へらむし / 篦虫

節足動物門甲殻綱等脚(とうきゃく)目ヘラムシ科に属する海産動物の総称。体長は1~3センチメートル。種によって形態は異なるが、一般に細長く、いわゆるへら状。背腹に扁平(へんぺい)で、頭部に続いて7胸節、さらに種ごとに癒合の状態が異なる腹部からなる。潮間帯から浅海にかけて石の下や海藻の間、あるいは流れ藻について生活し、色彩変異に富む。各地の海岸にもっとも普通にみられるのはイソヘラムシCleantiella isopusで、とくに色変わりが多い。また、本州中部以南にはホソヘラムシCleantis planicaudaが、北にはオホーツクヘラムシIdotea ochotensisが多い。

[武田正倫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android