ペーチ(英語表記)Pécs

デジタル大辞泉 「ペーチ」の意味・読み・例文・類語

ペーチ(Pécs)

ハンガリー南西部の都市。メチェック山南麓に位置する。同国第四の規模をもち、南部における政治、経済、文化の中心都市として知られる。古代ローマ帝国属領だった4世紀頃はソピアネと呼ばれ、交易により栄えた。市街中心部には4世紀頃に造られた初期キリスト教徒のカタコンブ(地下墓所)と礼拝堂遺構があり、2000年に「ペーチ(ソピアネ)にある初期キリスト教墓地遺跡」の名称で世界遺産(文化遺産)に登録された。14世紀に同国最古のペーチ大学が創設されたほか、オスマン帝国時代に建てられたガージカーシムパシャモスクヤコバーリハッサーンモスクなどが残っている。ヘレンドと並び同国を代表する高級陶磁ジョルナイの発祥の地。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペーチ」の意味・わかりやすい解説

ペーチ
ぺーち
Pécs

ハンガリー南部、特別行政区の指定都市。バラニャ県の県都をも兼ねる。人口16万2498(2001)。同国南部の文化、工業、経済の中心地。古代ローマ帝国の領有時代は、クインク・エクレジエQuinqu Écclesiae(「五つの教会」の意)とよばれ、9世紀にはこれを翻訳したドイツ語の呼称フュンフキルヘンFünfkirchenの名で知られるようになった。ハンガリー最初の大学として1367年に設立(1922再開校)されたペーチ大学は、ヨーロッパでも有数の古い歴史を誇る。おもな産業は、たばこ、酪製品、醸造、農業機械などの加工および製造のほか、石炭化学工業がある。北方のメチェック山麓(さんろく)のコムロ炭田は良質の石炭を産し、これをペーチでコークスにしてドゥノウイバーロシュの製鉄所に送っている。また、彩色豊かな陶器が伝統工芸品として知られる。

[古藤田一雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペーチ」の意味・わかりやすい解説

ペーチ
Pécs

ドイツ語ではフュンフキルヘン Fünfkirchen。ハンガリー南西部の都市。メチェク山地の南斜面に位置する。東郊に炭田があり,最近はウラン鉱産出で有名。ハンガリーのドナウ川以南では最古の都市で,紀元前からイリュリア人,ケルト人の集落があり,ローマ時代にはこの地方の中心地であった。民族移動の時代を経てマジャール人が居住し,11世紀初めには司教座がおかれ,中世には手工業農産物の交易で繁栄した。 1367年には国内最古の大学がおかれた。 16世紀中頃から 17世紀末まではオスマン帝国に占領され,市中のパジャ・ガジ・カッシムのモスク (現在はカトリック聖堂) やミナレットにその跡をとどめる。現在はバラニャ地方の中心都市で,金属,機械,皮革などの工業が行われる。人口 17万 23 (1991推計) 。

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百科事典マイペディア 「ペーチ」の意味・わかりやすい解説

ペーチ

ハンガリー南西部,バラニャ県の県都。メチェク山地の麓にあり,経済・文化の中心。付近に歴青炭を産し,金属・機械・皮革・陶磁器工業が盛ん。ハンガリー最古の大学(1367年創立)がある。古代ローマの植民市で,中世には手工業および農産物の交易で栄えた。トルコの支配下(1543年―1686年)ではその軍事的・文化的中心地であった。初期キリスト教のカタコンベは2000年に世界文化遺産に登録された。15万6000人(2011)。

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世界大百科事典(旧版)内のペーチの言及

【コソボ[州]】より

…地下資源は褐炭,クロムなど。中心地はペーチPeć(人口9万)で,中世セルビアの総主教座が置かれた修道院ペーチカ・パトリアルシア(13~14世紀)がある。ジャコビツァ(人口7万)近くにはデチャーニ修道院(14世紀)が建つ。…

※「ペーチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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