日本大百科全書(ニッポニカ) 「マジャール人」の意味・わかりやすい解説
マジャール人
まじゃーるじん
ハンガリー人のこと。マジャールMagyarは彼らの自称で、もとは部族連合内の一部族名に由来する。言語はマジャール語(ハンガリー語)で、フィン・ウゴル語族に属す。現在の人口は周辺諸国をあわせて1500万ほどで、同語族のなかでは最大。紀元前1000年ごろに揺籃(ようらん)の地ウラルを離れ、その後は長期にわたってトルコ系諸民族と共存、牧畜・農耕を学ぶ。Ungar(ドイツ語)、Hongrois(フランス語)などの今日のヨーロッパでの呼称は、トルコ語のオノグルonogur(10の部族の意)に起源をもつ。紀元後はフン人、ハザール人などの支配下にあったが、9世紀初めに独自の部族連合を形成。ただし二重首長制は前支配部族から継承した。895年ころの建国時の人口は約50万。13世紀モンゴル人来襲による人口激減を受けて、ベーラ4世によるドイツ人、イタリア人、トルコ系クン人などの入植が行われた。周辺のスラブ人も含めて、これらの諸民族との混住から、今日のマジャール人の基礎ができた。
[家田 修]
『E・パムレーニ編、田代文雄・鹿島正裕訳『ハンガリー史』(1980・恒文社)』