改訂新版 世界大百科事典 「ホウライチク」の意味・わかりやすい解説
ホウライチク (蓬萊竹)
Bambusa multiplex (Lour.) Raeusch.
イネ科の中型のタケ。稈(かん)はイネの株のようにかたまってはえ,たけのこが夏ごろから出るので土用竹,若竹が株の外側に出て内側の老竹を守っている姿から孝行竹,強い再生力のあることから達磨(だるま)竹などの名がある。原産地は熱帯アジアであるが,日本の暖地にもよく育つ。かたまってはえるのは,この属の特徴であるが,これは地下茎が短く地上の稈に連なっているからである。高さ8mになるものもある。節ごとの枝の数は数本以上叢生(そうせい)し,小枝に細長い葉が6~16枚,羽状につく。花は1株のタケすべてでなく,一部分のタケに咲くことが多い。花穂は小枝の節部に20ちかく束生する。おしべは6本,苞頴(ほうえい)がない。稈をステッキや細工物に使い,防風林として屋敷のまわりに植えたり,刈り込んで生垣とし,いけばなにも利用する。この属のものは稈の挿木によっても殖やすことができる。園芸品種で,稈に緑と黄の縦のすじのあるものをスホウチク(蘇芳竹)f.alphonso-karii Nakaiといい,葉に白い縦じまのあるものをホウショウチク(鳳翔竹)f.variegata Hatsushimaという。ホウオウチク(鳳凰竹)f.elegans (Koidz.) Muroiは,小型で高さ3m以下。葉がとりわけ小さくて優美である。この仲間で葉に白い縦じまのあるものをフイリホウオウチク(斑入鳳凰竹)cv.Fuirihoochikuといい,稈が淡紅黄色の地に緑色の縦じまのあるのをベニホウオウチク(紅鳳凰竹)cv.Benihoochikuという。
ホウライチク属Bambusaは熱帯に多くの種が分布しているが,ダイフクチク(大福竹)B.ventricosa McClureは中・小型のタケで,稈の節間がふくれている。盆栽とするほか,庭に植えつける。ダイサンチク(泰山竹)B.vulgaris Schrad.は竜頭竹(りゆうずちく),赤竹(せきちく)ともいい,東南アジアから太平洋諸島まで広く分布し,日本でも暖地であれば育つ。大きいものは直径10cm,高さ15mにもなる。シチク(刺竹)B.stenostachya Hackelは枝にとげがあり,大きいものは直径15cm,高さ25mになる。家のまわりに植えて防風用とし,材は建築用になる。なお枝にとげのある近縁種が多く,東南アジア地方に広く分布し,英名をthorny bambooと総称する。
執筆者:上田 弘一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報