ホコリダニ
ホコリダニ科Tarsonemidaeに属するダニの総称。体長0.1~0.3mm。体色は乳白色ないし褐色。ほこりのように小さいのが名の由来。雌雄は著しく形態が違う。雌は卵形に近く,第4脚は非常に細く,末端はつめも爪間体もなく,2本のむち状の毛だけで終わっている。雄は小型で,ほぼ六角形を呈し,気管を欠き,第4脚は他脚よりも太く,内側に湾曲し,末端には種々の形をした1個のつめがある。卵から孵化(ふか)した幼虫は,静止期を経て脱皮し直ちに成虫になる。雄成虫は静止期の雌幼虫を第4脚を用いて運搬し,成虫になるとすぐに交尾する。植物寄生性の種が多く,農業害虫として軽視できないものもいる。チャノホコリダニPolyphagotarsonemus latusは,チャ,かんきつ類,マメ,ナス,ピーマン,ウリなどに寄生し,主として幼芽を加害する。菌類,藻類を食べる種の中には,貯蔵食品に発生して食品害虫となるものもある。
執筆者:江原 昭三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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ホコリダニ
ほこりだに / 埃蜱
tarsonemid mite
節足動物門クモ形綱ダニ目ホコリダニ科Tarsonemidaeの微小なダニの総称。体長は0.1~0.3ミリメートル。雌雄間の性的二形が顕著で、雌の第4脚(きゃく)はきわめて細く、末端に2本の鞭(むち)状の毛をもつ。雄は小形で、第4脚はとくに太く、内側に湾曲して末端に特異なつめがある。雌では前胴体部の前方背側面に気門が開口しているが、雄は気管系を欠いている。ホコリダニの発育環には若虫期を欠いている。雌は体のわりに大きな白色不透明な卵を産む。卵から孵化(ふか)した幼虫(6脚)は静止期を経て脱皮してただちに成虫(8脚)になる。成虫の体色は多様で、食植性の種類では緑に、食菌性の種類では食べた菌の色になる。雌は8脚全部を歩行に使うが、雄の第4脚は機能上は生殖用の付属肢であって、静止期の雌や雌成虫を把握し、運搬あるいは交尾のために使用する。
ホコリダニ科には植物寄生性の種類が多く、農業害虫として問題になる種類がある。シクラメンホコリダニはシクラメンの葉、つぼみ、球根に寄生する害虫。温室栽培の花卉(かき)に被害が大きい。露地のイチゴも加害する。チャノホコリダニはチャ、柑橘(かんきつ)類、スイカ、ナス、ピーマンなど多くの作物の新葉に寄生してその成長を止める。そのほか、食菌性、食藻性、動物寄生性の種類もある。
[森 樊須]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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ホコリダニ
Tarsonemidae; tarsonemid mite
クモ綱ダニ目ホコリダニ科に属する種類の総称。体長 0.1~0.2mmの微小種で,体色は白色ないし黄褐色。雌は卵形,雄は六角形に近い。第2脚と第3脚の間が広く開くのが特徴。卵→幼虫→休止期→成虫と成育する。雄は強く曲った第4脚で休止期の雌をつかまえて運び,交尾する。土壌中に自由生活を営むほか,貯蔵穀類や医薬品に発生したり野菜や園芸植物などを食害する。種々の食品に見出されるナミホコリダニ Tarsonemus granarius,シクラメン,ゼラニウム,キクなどの観賞用植物に大害を与えるシクラメンホコリダニ T. pallidus,ミカン,茶,その他を食害するチャノホコリダニ Polyphagotarsonemus latusなど,いずれも世界的に広く分布する。 (→ダニ類 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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ホコリダニ
蛛形(ちゅけい)綱ホコリダニ科の総称。いずれも体長0.1mm内外,気管系と気門が雌だけにあるなど雌雄で形状が異なる。植物寄生種と穀類などに繁殖する種類とがあり,チャノホコリダニ,シクラメンホコリダニなどは農業・園芸害虫,ムギホコリダニ,ナミホコリダニなどは食品害虫として知られる。また人体内ダニ症の病原をなす疑いをもたれる場合もある。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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世界大百科事典(旧版)内のホコリダニの言及
【ダニ(蜱∥蟎∥壁蝨)】より
…微小な虫がはっていると,すぐにダニだと思いがちであるが,速く走るようであればクモ,ルーペで見てりっぱな眼や触角があったら昆虫と判断してよい。
[生活史]
受精に際して正式の交尾を行うのはハダニ,[コナダニ],[ホコリダニ],ウモウダニなどに限られ,他のほとんどのダニは精包(精莢(せいきよう)とも呼ばれ,精子の入った袋)の受渡しという手段をとる。ヤドリダニ類では口器(鋏角)を用い,[ミズダニ]では第3脚を用い,雄が雌の生殖口に精包を入れるが,[ササラダニ]では雄が精包を置きっぱなしにし,雌があとでこれを拾う。…
※「ホコリダニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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