改訂新版 世界大百科事典 「ホッカイエビ」の意味・わかりやすい解説
ホッカイエビ (北海蝦)
Pandalus kessleri
十脚目タラバエビ科の甲殻類。食用エビで,寒海性の重要種。体長13cm内外で,北海道からサハリンにかけて多産する。浅海のアマモ帯に多い。生きているときは暗緑褐色で,体側に数本の淡黄白色の縦縞が走る。大きな額角(がつかく)をもち,その上縁に13~18本(頭胸甲上に4~5本)の可動棘(かどうきよく),下縁に10~15本の不動棘がある。胸脚の形態はボタンエビやトヤマエビなどと同様で,また,同じように雄性先熟の性転換をする。体長5.5cm以下の個体はすべて雄。性転換中のものは体長5.5~11.5cmに見られ,雌は8cm以上の個体だけに見られる。雌に転換したものは産卵し,幼生を放った後に一生を終えるが,寿命は孵化(ふか)後1年半ほどと考えられる。抱卵期間は約8ヵ月で,体長6.5mmほどのゾエア幼生で孵化する。卵数は体長12cmほどの雌で350~550粒である。雑食性で,ケイ藻類,海藻などのほかデトリタスも食べ,動物質の餌としては甲殻類やゴカイ類をとくに好む。缶詰,つくだ煮,むき身にされる。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報