高放射性物質取扱い施設のことをホット・ラボラトリーhot laboratoryあるいは略してホット・ラボという。原子力の分野では、放射能レベルが高いことを定性的にホットというが、ホット・ラボで取り扱う放射能は、通常の研究室で取り扱う放射能よりも桁(けた)違いに強い。
原子炉の燃料や材料の研究を行うには、燃料あるいは材料試料をカプセルに収め、原子炉の炉心で中性子を照射して、物性変化や機械的変化などを調べる必要がある。原子炉で中性子照射したカプセルは放射能が強く、原子炉からの取り出し、運搬、解体、試験などにはとくに注意を払う必要がある。
ホット・ラボには、コンクリートあるいは鉛で遮蔽(しゃへい)されたケーブとよばれる小室(縦・横・高さとも約4メートル)がいくつもあり、カプセルの解体、試料の取り出し、各種試験を効率よく行うことができる。ケーブ内は放射能が強いため、試験はすべてマニピュレーターを使って遠隔操作で行われる。材料試験炉のように、原子炉とホット・ラボをカナル(運河)でつなぎ、カプセルの運搬を容易にしている研究施設もある。
[桜井 淳]
放射能の高い放射性物質を安全に取り扱うことができるように特に設計された施設をいう。hot laboratoryの略であるが,hot labのままでも使用する。
この施設を利用して,例えば核燃料の照射後試験や放射性標識化合物の合成などの各種の試験,検査,実験が行われる。放射性物質の取扱いは,ホットラボの中に設置されたホットセルhot cellまたはホットケーブhot cave(ホットセルの連合したものを特にさす場合がある)と呼ばれる鉄,鉛,コンクリートなどで遮へいされ,鉛ガラス製の透視窓からマニピュレーターで遠隔操作が行えるように設備された室または箱状の空間の中で行われる。
このような施設は,放射性物質の環境への放出を防止するための排気設備と排水設備および放射線モニターを備えていなければならない。作業者の被曝をできるだけ低減するための遮へいと,放射能汚染の拡大を防止するための汚染検査室も必要である。また火災防止のための設備も重要であることはいうまでもない。
執筆者:石榑 顕吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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