改訂新版 世界大百科事典 「ホルトノキ」の意味・わかりやすい解説
ホルトノキ
Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir.
暖帯~亜熱帯の照葉樹林にみられるホルトノキ科の常緑樹。モガシともいう。樹高はふつう10~15m,直径30~50cmであるが,大きいものでは樹高30m,直径1m以上のものがある。社寺の境内によく巨木をみる。樹皮は灰褐色で平滑。葉はやや革質,長さ5~13cmの楕円状披針形~倒披針形で,ふちに低い鈍鋸歯があり,葉柄は約1cmで互生する。一見ヤマモモの葉に似るが,裏面側脈腋(みやくえき)に膜状物があるので区別できる。7月ころ,前年の枝に生じた短い総状花序に10~20個の黄白色の小さい両性花をつける。萼片5枚,花弁5枚,おしべ多数。花弁の上部は糸状に細かく裂ける。果実は長さ1.5~2cmの楕円形の石果で,12月ころ青黒色に熟する。房総半島以南の本州から台湾,中国南部,インドシナにわたって広く分布する。ホルトノキとは〈ポルトガルの木〉で本来はオリーブを意味したが,平賀源内がまちがえて本種にこの名を与えた。
ホルトノキ科は世界の熱帯から亜熱帯を中心に12属約400種があり,なかでもホルトノキ属Elaeocarpusは東南アジアから太平洋地域にかけて多くの種がある。日本にはほかにコバンモチE.japonicus Sieb.et Zucc.などがある。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報