翻訳|Beaujolais
フランス中東部,ローヌ県北部の地方。中心都市ビルフランシュ・シュル・ソーヌVillefranche-sur-Saône(人口2万8881。1982)。ボージョレとは,ボージュの地方またはボージュ伯領を意味する。この地方は10~12世紀にボージュ家の所領であったが,その後アルボン・フォレ家,ブルボン家,オルレアン家へと領有権が移り,17世紀のルイ14世治下で伯領が設けられた。
ボージョレ山地が南北に連なり,その東斜面はブドウ酒の産地として名高い。この山地はマシフ・サントラル(中央山地)から北東へ延びるヘルシニア山系に属するもので,古くて硬い片麻岩,グラニュライト(白粒岩),斑岩などから成っており,北はシャロレ山地,マコネ山地,南はリヨネ山地と雁行する。最高峰は1012mのサン・リゴー山で,全体がさほど高くなく,しかも断層によっていくつかの小ブロックに分かれている。おだやかな山地で,標高800~900mの所に広い平たん面が残っており,西斜面はゆるくロアール川の谷に下っていく。これに対し,東斜面はかなり急で,ソーヌ川および支流のアゼルグ川やブレベンヌ川の谷に臨んでおり,標高300mの所にもう一つの平たん面が見られる。
山地は森林で覆われ,牧場ではシャロレ牛などの家畜が広く飼われている。これに対し,日当りの良い東斜面はとくに〈ボージョレのコート(丘陵)〉とよばれ,ブドウ栽培地帯として名高い。ここはコート・ドールを中心とするブルゴーニュのブドウ栽培地帯が南へ延びた部分にあたるが,地味はあまり肥えていないので,ブドウの苗木はそことは違った品種のものが植えられている。また株は低く育てられ,植付け後10年間ほどは添え木が使われるなどの点で,南フランスに共通するところが多い。ブドウの栽培面積は約2万2000haに及ぶ。ここで作られるブドウ酒はほとんどが赤で,その名産地がクリュとよばれることは他と同様である。こういう名産地は北部に多く,10ヵ所近くあげられ,そこから産出するブドウ酒はボージョレ・ビラージュとよばれ,おもに南部から出るボージョレ・クーランと区別されている。北部の名産地に囲まれたベルビルBelleville(人口6609。1975)は,ソーヌ川西岸の小さな地方町にすぎないが,12世紀の教会をもち,ブドウ酒取引の中心地として知られる。フランス哲学史の研究家ダミロンJ.P.Damiron(1794-1862)は,この町の近くで生まれた。
ブドウを除いては生産性のあまり高くない農業と同様に,山地全域では工業活動がさほど活発ではない。伝統の古い繊維工業も停滞気味である。しかしリヨン・サンテティエンヌ工業地域が発展するにつれて,その影響がソーヌ川の谷づたいに北へ及んできた。ソーヌ川西岸を占める中心都市のビルフランシュ・シュル・ソーヌは機械,電気,繊維,化学,食品などの近代工業によってリヨンを中心とする工業地域の一翼を担っており,みずからも都市圏を広げつつある。ここでもブドウ酒が取引される。
執筆者:谷岡 武雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…南流する部分は西側のマシフ・サントラルと東側のジュラ山脈に挟まれた幅の広い地溝であり,ソーヌ川沿いの平野ではトウモロコシの栽培が盛んである。西側には1000m内外の標高をもつマコネ,ボージョレの山地が続き,ブルゴーニュ・ワインの特産地として名高い。ソーヌ川に沿うマコンMâconはワインの集散地の一つである。…
…しかし,地区によっては熟成期間を短くして出荷するものもある。なかでもブルゴーニュ地方のボージョレーの新酒は,仕込んで2ヵ月もたたぬ11月15日に発売解禁となり,多くのフランス人を熱狂させる。 白ワインでは,ブドウを破砕機でつぶして亜硫酸を加えると,すぐ圧搾機にかける。…
※「ボージョレ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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