イギリスの作家。ロンドンに生まれる。オックスフォード大学卒業後、教育映画、判事などの仕事に携わり作家活動に入る。児童文学と大人向けの作品を交互に発表。初期の児童文学は冒険物語の色合いが強かったが、『帰ってきたキャリー』(1973)で自身の学童疎開の体験に基づき、第二次世界大戦時にロンドンからウェールズの谷間の村に疎開した多感な少女キャリーを主人公に子供の目線でとらえた社会を描き出した。この作品で登場人物の個性的な描写、心理描写の精密さ、筋(すじ)運びの巧みさを生かした豊かな物語性という作風を確立し、カーネギーおよびガーディアン両児童文学賞有力候補作となった。BBC放送で放映もされた。『ペパーミント・ピッグのジョニー』(1975)では父親の失業や子豚のジョニーとの交流を通して人生の哀歓を知っていく子供たちの姿を描きガーディアン賞を受賞した。『帰ってきたキャリー』の後日談『砦(とりで)の町の秘密の反乱』(1978)では地中海の小国のクーデターにかかわっていく子供たちを、『闇(やみ)の中のデービッド』(1982)では謎の若者がもたらす恐怖や不安を描く。『家族さがしの夏』(1989)では2人のおばさんに育てられている少女ジェーンが父親が再婚してできた子供たちにこっそり会いに出かけ、幼いころの恐ろしい出来事を思い出す。これらの作品で子供であるがゆえに体験する恐れや憎しみの感情を作品世界に描き込み、リアリズム児童文学の一つの方向性を打ち出した。
[佐藤凉子]
『松本亨子訳『帰ってきたキャリー』(1977・評論社)』▽『松本亨子訳『ペパーミント・ピッグのジョニー』(1978・評論社)』▽『宮下嶺夫訳『闇の中のデービッド』(1986・評論社)』▽『西村醇子訳『家族さがしの夏』(1998・国土社)』▽『小玉知子訳『おばあちゃんはハーレーにのって』(2002・偕成社)』▽『松本亨子訳『砦の町の秘密の反乱』(評論社・てのり文庫)』▽『デヴィッド・リーズ著、白坂麻衣子訳『物語る人びと――英米児童文学18人の作家たち』(1997・偕成社)』
スウェーデン北部、ノールランド地方の軍事都市。人口2万8380(2001)。ルーレオ市の西35キロメートル、ルーレ川左岸に位置する。交通の要地にあるため重砲・戦車隊などが駐屯し、北方防備の重要基地となっている。地方商業の中心でもある。軍事博物館、イョーベル・ルーレ教会と、辺境からのミサ参加者や夏季の観光客の宿泊施設「教会村」があり、郊外には大養魚場がある。
[中島香子]
カナダの政治家。保守党に所属。ノバ・スコシアに生まれ,弁護士を経て1896年連邦議会下院に選出されて政界に入る。1901年C.タッパーの後を継いで保守党党首となり,11年の総選挙では自由党の失政に助けられた形で保守党が政権を掌握し,首相に就任。ボーデンの統治は第1次世界大戦への対応という形で展開された。戦時処置法の可決により内閣には非常時に際し強権発動が認められ,莫大な負債に苦しんでいた民間鉄道の国営化がはかられた。大戦の進行につれ,志願兵制度ではイギリス帝国が必要とする兵員の確保は難しく,17年5月,ボーデンは議会に徴兵制の導入を提議。ケベック州の反対を押し切るために保守党,自由党の連合内閣を形成して徴兵を実現したが,自由党党首で前首相W.ローリエの承認を得ることはできなかった。兵員,物資の補給でイギリスの戦争遂行を支援したカナダは,それをてこにボーデンの時代に国際的な地位を上昇させたことが注目される。イギリス帝国戦時会議,戦時内閣の一員であった彼は,カナダの発言力強化に尽力し,講和条約の調印,国際連盟創設にはイギリスと対等の立場で参加した。また国内では兵役に従事する者の家族への参政権という形で婦人参政権が部分的に実現するが,これは拡大されて18年,連邦段階での婦人参政権に結実した。20年病身を理由に政界を退くが,21年から22年のワシントン会議にカナダを代表するなど,政界への影響力を保ち続けた。
執筆者:大原 祐子
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…大戦が国内に及ぼした影響の第1は,再び高まったイギリス系・フランス系の軋轢であろう。徴兵制に反対するフランス系カナダ人の激しい抵抗に遭遇したR.L.ボーデン保守党内閣は,自由党との連合内閣を形成してこれを切り抜けたが,以後ケベック州における保守党の支持は著しく低下した。第2としては,女性の地位の向上があげられよう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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