カーネギー(読み)かーねぎー(英語表記)Andrew Carnegie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーネギー」の意味・わかりやすい解説

カーネギー
かーねぎー
Andrew Carnegie
(1835―1919)

アメリカの産業企業家、慈善事業家。スコットランドの貧しい織工の家に生まれ、1848年一家とともに渡米。紡績工を振り出しに、いくつかの職業を経たのちペンシルベニア鉄道に職を得、管理者の地位に昇進した。しかし、鉄道建設が急速に進むありさま目の当たりにみて、鉄道経営よりも鉄道建設資材の供給に関心をもち、それまでに得た投資による利益を元手に製鉄業に進出した。主力製品は鉄レールであったが、やがてイギリスで製鋼法の発明家ベッセマーと知り合ったのを機に「鉄の時代は去った。鋼鉄こそ王者だ」と確信するに至り、70年代の不況のさなかに製鋼所の建設に着手した。80年代にはいくつかの競争企業を支配下に収め、90年代には五大湖周辺の鉱床炭鉱船舶、鉄道を買収、99年にはこれらの事業を統合してカーネギー製鋼所に改組し、原料から完成品に至る一貫生産体制を確立した。しかしまもなく、鉄道から鉄鋼へと支配網を拡大しつつあったウォール街の金融集団との鋼製品市場をめぐる角逐苦境にたち、1901年モルガン商会に企業を売却し、実業界より退いた。以来18年、「富は神より委託されたもの」との信念に基づき、今日に残るホール財団、カーネギー工科大学などの教育施設などを設立し、慈善事業に携わるかたわら、事業と社会のあり方を説く著述活動に専念し、残された第二人生を送った。

[小林袈裟治]

『坂西志保訳『鉄鋼王カーネギー自伝』(角川文庫)』『坂西志保訳『富と福音――カーネギー自伝』(『世界の人間像5』所収・1961・角川書店)』『J・チェンバレン著、宇野博二訳『アメリカ産業を築いた人びと』(1965・至誠堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーネギー」の意味・わかりやすい解説

カーネギー
Carnegie, Andrew

[生]1835.11.25. イギリス,ダンファームリン
[没]1919.8.11. アメリカ合衆国,マサチューセッツ,レノックス
アメリカ合衆国の実業家。 1848年スコットランドからペンシルバニアへ家族とともに移住。最初,紡績工場で働き,電報局員,電信技手などを経て,1865年ピッツバーグで製鉄業を始め,1873年にはホームステッドで製鋼業会社を設立した。しだいに競合相手をしのぎ,1889にカーネギー鉄鋼株式会社を設立。アメリカの鉄鋼の4分の1を生産するにいたった。 1901年に大持株会社ユナイテッド・ステーツ・スチールと合併し,引退。カーネギーの引退は,アメリカにおける産業資本に対する金融資本の勝利を暗示するものであった。富豪の使命は人類の進歩のためにその富を大衆の利益に帰することにある,という信念によって,カーネギー協会 (1902設立) ,カーネギー財団 (1911設立) などの事業に巨額の資金を投じた。主著"Triumphant Democracy" (1886) ,『富の福音』 The Gospel of Wealth (1889) 。

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