ボーン(読み)ぼーん(英語表記)Louis-Paul Boon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボーン」の意味・わかりやすい解説

ボーン(Henry Vaughn)
ぼーん
Henry Vaughn
(1622―1695)

イギリスの詩人。ウェールズ出身で、ケルト的傾向が強く、いわゆる形而上派詩人(メタフィジカル・ポエット)の神秘主義的側面を代表する。オックスフォード大学を出て、ピューリタン革命では王党派に属したが、敗戦後田舎(いなか)に隠棲(いんせい)して医者になり、瞑想(めいそう)的な詩や散文を書いた。同じ形而上派の宗教詩人G・ハーバートに比べ、作品の完成度は低いが、神秘的恍惚(こうこつ)の表現では英詩史上まれにみる達成を示している。代表作は『火花散る火打ち石』二部(1650~1655)に収められ、ほかに詩と散文を集めた『アスクの白鳥』(1651)がある。

川崎寿彦


ボーン(Randolph Silliman Bourne)
ぼーん
Randolph Silliman Bourne
(1886―1918)

アメリカ評論家。巨大ビジネスの興隆と拡大しゆく貧民層という社会状況に生きて、ビジネス社会アメリカを激しく批判し、部分的にJ・デューイに共鳴しつつ教育改革を訴えて『教育と生活』(1917)その他を発表。惜しまれて若死にしたあとの『早すぎる論文集』(1919)には反戦思想が、親友V・W・ブルックスの編んだ『文芸急進派の歴史』(1920)には文芸批評が、若く激しく息づいている。オプンハイムJames Oppenheim(1882―1932)の『ボーンのために』は悲しく美しい追悼詩である。

[後藤昭次 2015年10月20日]


ボーン(Louis-Paul Boon)
ぼーん
Louis-Paul Boon
(1912―1979)

ベルギーフランドルの小説家。写実主義第一人者。その作品はペシミズムの色調が濃い。無産階級の台頭を描いた『近郊地域の胎動』(1941)、個人の社会的責任を強調したルポルタージュ『私の小さな闘争』(1946)などがある。彼の作品の頂点ともいえる『チャペルへの道』(1953)は、ベルギーにおける社会主義建設期のプロレタリア出身の一少女の成長を描いたもので、その強烈な写実、巧みな構成は秀逸。『続チャペルへの道』は『テル・ミューレンの夏』のタイトルで1956年に出る。『二人の妖怪(ようかい)』(1952)、『メヌエット』(1955)などの短編もある。シュルレアリスムの画家としても有名。

[近藤紀子]


ボーン(Sarah Vaughan)
ぼーん
Sarah Vaughan
(1924―1990)

アメリカの女性ジャズ歌手。ニュー・ジャージー州生まれ。1942年アポロ劇場のコンテストで入賞してアール・ハインズ楽団に加入。チャーリー・パーカーやデイジー・ガレスピーらと共演し、先輩ビリー・エクスタインとともにモダン・ジャズ歌手の草分けとなり、エクスタイン楽団を経て45年に独立。音程が正確で、驚異的な広い声域と豊かな声量をもち、ジャズ・ボーカルの女王的存在となった。

[青木 啓]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボーン」の意味・わかりやすい解説

ボーン
Vaughan, Henry

[生]1621頃.ウェールズ,ランサントフライド
[没]1695.4.23. ウェールズ,ランサントフライド
イギリスの詩人。 J.ダンや G.ハーバートの影響を受け,宗教的形而上詩を書いた。かつてシリュール人が住んだといわれるウェールズの郷村を愛し,みずからシリュリスト Siluristと称した。オックスフォード大学出身の医師で,内乱には王党派の軍医として従軍。文筆活動はラテン詩文の翻訳から始め,『詩集』 Poems (1646) や『アスク川の白鳥』 Olor Iscanus (51) に収められた世俗的な詩を書いたのち,ある宗教的体験を転機として神秘的傾向を帯びるようになった。「ある夜わたしは永遠を見た」で始る「世界」 The Worldや,ワーズワスに影響を与えたといわれる「退行」 The Retreatなどの詩を含む宗教詩集『火花散る燧石』 Silex Scintillans (50,55) が代表作。

ボーン
Vaughan, Sarah Lois

[生]1924.3.27. ニュージャージー,ニューアーク
[没]1990.4.3. カリフォルニア,サンフェルナンドバレー
アメリカのジャズ歌手。アマチュア音楽家の娘として生れ,7歳でピアノ,12歳でオルガンを習い始め,教会の聖歌隊で歌う。 1942年アポロ・シアターのアマチュア・コンテストで優勝し,その後アール・ハインズ楽団で歌手兼第2ピアニストとしてプロ活動を開始する。 44年ビリー・エクスタイン楽団に参加し,D.ガレスピー,C.パーカーらに影響を受け,みずからの歌唱法を確立した。 45年にソロとして『イッツ・マジック』を発表。 50年代にはアメリカ,ヨーロッパで演奏ツアーを行い多くのファンを獲得,映画にも出演した。3オクターブもの音域をもち,最も歌唱力のあるジャズ歌手との定評を得た。

ボーン
Bourne, Geoffrey Howard

[生]1909.11.17. パース
[没]1988.7.19.
オーストラリア生れのアメリカの解剖学者。オックスフォード大学で学位を取得,母校およびロンドン大学に勤務したのち 1957年にアメリカに移住し,62年に帰化した。 57~62年エモリー大学解剖学教授,62年からアトランタの霊長類研究所所長。哺乳類の副腎を用いて,動物組織でビタミンCの存在を証明するための組織化学的技法を創始 (1933) 。のちに創傷の治癒機構および硬・軟組織における酵素の局在を研究した。主著"Structure and Function of Muscle" (62) ,"Biochemistry and Physiology of Bone" (56) 。

ボーン
Vaughan, Thomas

[生]1621頃.ウェールズ,ランサントフライド
[没]1666.2.27. オックスフォードシャー,オールベリー
イギリスの化学者,神秘家。 H.ボーンの双子の兄弟。新プラトン学派の H.モアとの論争で有名。錬金術に関する著作のほか,英語およびラテン語の詩も書いた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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