特典の価値となるポイントを付与して、顧客がその特典を値引きや景品交換などに利用するサービス。また、会員制度のランクやステージを表す場合に使われることもある。
民間企業が発行する場合が多いが、エコポイントやマイナポイントのように政府や自治体が発行する場合もある。また、地域経済の活性化のために地域商店街などが発行する場合もある。
名称は、ポイントサービスのほかに、ポイントプログラムとよばれることが多い。また、電子マネーなどとともに企業が発行する疑似的な通貨であるため、企業通貨とよばれることもある。さらに、官公庁では、企業が発行する場合を区別して、企業ポイントとよぶ場合もある。海外では、ブランド通貨branded currencyともよばれており、これにはクーポンcoupon、ギフトgift card、およびポイントloyality pointが含まれる。
国内のポイントサービスには、古くはブルーチップやグリーンスタンプのような紙(ポイント券など)のものや紙にスタンプを押印するものがあり、現在は磁気カードやQRコードなどで読み取ってサーバー上に電子的に蓄積されるもの、ICチップに蓄積されるものなど多種多様である。
ポイントサービスには、ポイントを自社が発行するものや、他社が発行するものを活用する場合もある。後者の場合、共通ポイントとよばれるサービスがあり、Vポイント、Ponta(ポンタ)、楽天ポイント、dポイント、PayPay(ペイペイ)ポイントなどが有名である。なお、共通ポイントを活用する事業者の連携において、ポイントに紐(ひも)づくID(会員)管理によって経済圏(エコシステム)が構成され、マーケティングの陣取り合戦が展開されている。
ポイントサービスを導入するおもな目的、想定効果は、事業者目線では、顧客を識別して「見分け」「ひきつけ」「育て」、さらに「引き込み」「送り合う」ことである。つまり、「顧客囲い込み」「優良顧客化」「新規顧客獲得」「相互送客」である。なお、ポイントといえども、値引きや景品交換できるポイントと、自社の利用状況に応じて顧客をランク分けすることで優良顧客を優遇し、ロイヤルティ(企業への愛着)を向上させるポイントとでは異なる。前者は流通ポイント(以降、ポイント)、後者は行動ポイントとよばれている。後者はランクに応じた特典はあるが、ポイント自体の利用はできない。
なお会計上では、ポイントは、自社が発行する場合、発行残額のすべてではなく、過去の利用割合に応じて、負債として引き当て計上(将来に充当される金額を見積もって計上)される場合が多い。一方で、他社が発行したポイントが活用された場合は、ポイントで購入された額が販促費として計上される場合が多い。
事業者側からは、ポイントを付与し、そのポイントが還元される。消費者側からは、ポイントを受領し、そのポイントを利用する。
事業者によるポイントの付与方法は、定常的に100円の商品購入ごとに1ポイント、来店時に1ポイントのように付与する場合もあれば、キャンペーンなどで非定常的に付与する場合もある。キャンペーンなどでは、対象者、対象商品、ある一定額以上、ある時間帯、ある店舗(エリア)などでボーナス的にポイントを付与する。
国内において、意識はせずとも、ポイントをひとつもためていないという消費者は“ほぼいない”。ただし、すべての消費者がポイントを全ポイント分利用できているわけではなく、失効するポイントも一定割合で存在する。失効の多いポイントサービスは利用頻度が少ないため、基本的に効果的ではない。失効の多いポイントサービスもあり、本当に効果があったかどうかの検証を行っていない場合が多い。
消費者によるポイントの利用方法は、1ポイントを1円として利用する場合が多いが、キャンペーンへの応募、対象によって増額で利用(新車購入した場合に1ポイント1.5円で利用など)、他ポイントや電子マネー(および一部現金)へ交換、環境貢献への寄付などに利用している。さらに、ポイントの少額を疑似的に株式のように投資する方法もある。
なお、ポイントサービスと似た販促手段にクーポン(または割引券・バウチャーvoucher)がある。これは、ポイントと異なり、購入時にその場で値引きなどに利用するものである。
[安岡寛道 2023年6月19日]
『安岡寛道著『「ポイント・会員制サービス」入門――会員組織の構築と改善、成功のポイントと未来戦略』(2014・東洋経済新報社)』』
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