懐中時計(読み)カイチュウドケイ

デジタル大辞泉 「懐中時計」の意味・読み・例文・類語

かいちゅう‐どけい〔クワイチユウ‐〕【懐中時計】

ひも・鎖で帯やバンドに結びつけて、ふところやポケットに入れて携帯する小型の時計。たもと時計。

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精選版 日本国語大辞典 「懐中時計」の意味・読み・例文・類語

かいちゅう‐どけいクヮイチュウ‥【懐中時計】

  1. 〘 名詞 〙 ふところやポケットに入れて携帯する小型の時計。腕時計より一回り大きくて、バンドや帯などに結びつけるための鎖や紐がついている。
    1. [初出の実例]「しばらく無言で居たりしが、俄(にはか)に心附いて、懐中時計(クヮイチウドケイ)を見る」(出典当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「懐中時計」の意味・わかりやすい解説

懐中時計
かいちゅうどけい

洋服のポケットなどに入れて持ち歩く小型の時計。17世紀ごろ、男性の衣服にポケットがつくようになるとともに現れ、第一次世界大戦後、腕時計にその地位を譲るまで広く用いられた。この約250年の間に、懐中時計は航海観測などのため正確な時計を求める当時の社会的な背景のもとで、構造、時間精度のうえで大きな進歩を遂げた。たとえばフランスのブレゲーAbraham Louis Breguet(1724―1823)が1802年に完成した機械部の直径63ミリメートルの時計――その完成を待たず1793年に断頭台に消えた注文者の王妃をしのんで「マリ・アントアネットMarie Antoinette」と名づけられた懐中時計――は、当時の技術を集成したものといえる。この時計は、鋼を必要としない部分はすべて金、自動巻きでおもりは白金ぜんまい香箱二つを備え、巻き状態を指示し、閏年(うるうどし)調整不要の永久カレンダー、温度計、均時差、中三針、ストップウォッチ、そしていつでも何時何分までを音で知らせる引打ち装置までも備えていた。

 脱進機調速機改良、温度誤差排除への努力と並んで、限られた階級の所有物であった時計を大衆に普及させようという試みが、1867年スイスに定住していたドイツ人のロスコフG. E. Roskopf(1813―1889)によって行われている。この時計は装飾的要素をいっさい省き、構造を極度に簡素化し、当時の新しい考案であるピンレバー脱進機とぜんまいの鍵(かぎ)巻きにかわる竜頭(りゅうず)方式を進んで採用し、普通品の約4分の1の価格で売り出された。懐中時計は第二次世界大戦後、市場から姿を消したが、ピンレバー脱進機をもつウォッチはいまなお「ロスコフ」とよばれている。

[元持邦之]

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百科事典マイペディア 「懐中時計」の意味・わかりやすい解説

懐中時計【かいちゅうどけい】

15世紀後半に出現した首に掛ける携帯時計が小型化したもの。クロノメーター開発の技術,レバー脱進機の発明などが小型化と精度向上を促進。18世紀末ごろからヨーロッパで一般に使用され,腕時計出現まで流行した。日本では1880年に初めて製作されたが,本格的な生産は1895年精工舎(現,セイコー(株))で行われた。→時計

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世界大百科事典(旧版)内の懐中時計の言及

【時計】より

… 日本語の時計に当たる英語はtimepieceであるが,ふつうはウォッチwatchかクロックclockのほうがよく使われる。ウォッチは腕時計や提げ時計(懐中時計)のように身につける時計をいい,日本ではこれを携帯時計と訳しており,一方,クロックは置時計,掛時計などと呼んでいる。 日本に初めて機械時計が渡来したのは,1551年(天文20),スペインの宣教師ザビエルによって大内義隆に献上されたのが最初とされている。…

※「懐中時計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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