イギリスの哲学者。7月28日、オーストリアのウィーンに生まれる。1918年からウィーン大学で、1925年からウィーン教育研究所で、哲学、数学、物理学、心理学を学び、1928年哲学博士。ユダヤ系の彼はナチス時代の1937年ニュージーランドに亡命し、1946年イギリスに移住。ロンドン大学(スクール・オブ・エコノミクス)講師を経て論理学と科学方法論の教授となる。1965年ナイト叙爵。最初の著書『探究の論理』(1934)で、科学(知識)は合理的な仮説の提起とその反証(批判)を通じて試行錯誤的に成長する、という「批判的合理主義」の認識論を提唱した。その後、この基本思想のもとに社会科学論、歴史論、人間論などを展開。「誤りから学ぶ」ことにより一歩一歩真理に近づくという考えは、現代の知的世界に広範な影響を与えた。主著は前記のほか『開かれた世界とその敵』(1945)『推測と反駁(はんばく)』(1963)『客観的知識』(1972)。
[濱井 修 2015年12月14日]
『カール・R・ポパー著、久野収・市井三郎訳『歴史主義の貧困』(1961・中央公論社)』▽『カール・R・ポパー著、大内義一・森博訳『科学的発見の論理』上下(1971、1972・恒星社厚生閣)』▽『藤本隆志・石垣壽郎・森博訳『推測と反駁――科学的知識の発展』(1980/新装版・2009・法政大学出版局)』▽『内田詔夫・小河原誠訳『開かれた社会とその敵』全2冊(1980・未来社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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