第一級アミノ基を二つ以上もつ直鎖脂肪族炭化水素の総称.アルギニンの代謝産物であるプトレッシン(H2N(CH2)4NH2(88.15)[CAS 110-60-1])から合成される脂肪族アミンで,主要なものとして,スペルミジン(spermidine)(H2N(CH2)4NH(CH2)3NH2(145.25)[CAS 124-20-9])とスペルミン(spermine)(H2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2(202.34)[CAS 71-44-3])がある.好熱菌ではこのほかのポリアミンも知られるが,一般には,原核生物にはスペルミジンが,真核生物にはスペルミジンとスペルミンが多いと考えてよい.ポリアミンは規則的に配置された陽電荷をもつ点で,金属イオンとは大きく異なり,その特性を生かして生体のタンパク質,脂質,核酸などの負電荷部位と相互作用し,種々の生理機能の調節,たとえばタンパク質の生合成やイオンチャネルの活性調節などにかかわっていると推定されている.スペルミジンはアミノブチル基の供与体としてもはたらく.
プトレッシン+S-adenosylmethioninamine
スペルミジン + 5′-methylthioadenosine
スペルミジン + S-adenosylmethioninamine
スペルミン + 5′-methylthioadenosine
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アミノ基‐NH2を二つ、あるいは三つもつ直鎖脂肪族炭化水素の総称。化学工業に利用されるエチレンジアミンH2N‐CH2‐CH2‐NH2、ジアミノプロパンN2H‐(CH2)3‐NH2、ヘキサメチレンジアミンH2N‐(CH2)6‐NH2などが含まれ、ナイロン、ポリウレタン、エポキシ樹脂など人工ポリマーの合成素材となっている。天然には、動植物の細胞体液中に広く分布しており、代表的なポリアミンとして、スペルミン、スペルミジン、プトレシン、カダベリンがある。なかでもスペルミンは細菌類を除くほとんどの生物にみいだされ、とくにヒトの精液、ウシの膵液に大量に存在している。細菌や酵母ではスペルミジン、プトレシンが合成できない変異株の研究から、これらは生育に必須と考えられている。また、ウイルスやバクテリオファージの殻内にも存在している。好熱性細菌にはテルミン、テルモスペルミン、カルドペンタミン、カルドヘキサミンなどのポリアミンが検出されている。
プトレシン、カダベリンはそれぞれアミノ酸、オルニチン、リジンの脱炭酸反応によってつくられ、それらを中間体としてスペルミジンやスペルミンが合成されている。
ポリアミンはアミノ基によるプラスの電荷で、核酸類と強く結合しており、核酸の立体構造の維持に関与すると考えられている。高等動植物での具体的な生理作用についてはわかっていない。
[菊池韶彦]
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