ドイツの歴史家。プロイセンの小都市ザルツウェーデルに生まれる。郵便局長の父の転勤に伴い、一家はベルリンへ移る。1882年ベルリン大学に入学し、ドロイゼンの講義に感銘し、歴史学研究を志す。86年に同大学を卒業し、プロイセン国家文書館に奉職した。90年、ジーベルの委嘱で歴史学専門誌『ヒストーリッシェ・ツァイトシュリフト』の編集に従事、ジーベル亡きあと長く編集主幹としてドイツ歴史学の発達に寄与する。1901年シュトラスブルク(ストラスブール)大学近世史正教授となり、06年フライブルク大学に転じる。07年、マイネッケの名を一躍ドイツ史学界に高めた『世界市民主義と国民国家』を公刊し、かたわら新聞に時事評論を盛んに発表する。14年、第一次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)してまもなく母校ベルリン大学に戻る。戦時中はベートマン・ホルウェークなどの政治家と交わった。大戦がドイツの敗北をもって終わると、ワイマール共和政が成立し、彼もドイツ再建のために尽力した。この期の第二の代表作が24年の『近代史における国家理性の理念』であり、大戦の反省に裏づけられている。28年に大学を退職したが、33年にナチスが政権を掌握した前後からしだいに圧迫を受け、国立歴史委員会会長や『ヒストーリッシェ・ツァイトシュリフト』編集者を辞めることを強いられた。この期の第三の代表作が近代歴史主義を研究した『歴史主義の成立』(1936)である。45年にドイツが降伏してから占領下のベルリン大学の教壇に立ったが、48年にベルリン自由大学が創立されると、その初代総長に推された。
彼は、ランケの正統派史学を継承した現代ドイツ最大の歴史家であって、ビスマルク第二帝国の建設と終末、ヒトラー第三帝国の崩壊という歴史的変動を身をもって体験し、これを自己の研究に刻印づけた。代表作に現れた新しい理念史的政治史学は、マイネッケの名を不朽ならしめている。
[西村貞二]
『西村貞二著『現代ドイツの歴史学』(1968・未来社)』▽『西村貞二著『マイネッケ』(1981・清水書院)』▽『林健太郎著『ドイツ史論集』(1976・中央公論社)』▽『岸田達也著『ドイツ史学思想史研究』(1976・ミネルヴァ書房)』
ドイツの歴史家。プロイセン文書室勤務(1887-1901)を経て,シュトラスブルク(1901-06),フライブルク(1906-14),ベルリン(1914-28)各大学教授。退官後,国立歴史委員会会長(1928-35)。この間,《史学雑誌》の編集者(1893-1935)。第2次大戦後はベルリン自由大学の創設に協力し,1948年初代総長となる。研究の出発点は解放戦争の時代で,《ボイエン伝》2巻(1896-99)は初期の大作である。マイネッケは,ランケの伝統をもっとも深く継承しながら,歴史の中に働く理念を探究し,ディルタイとともに精神史・理念史を創始した。その三大代表作は,《世界市民主義と国民国家》(1907),《近代史における国家理性の理念》(1924),《歴史主義の成立》2巻(1936)。なお政治的には自由主義で,第1次大戦においては併合主義に反対した。さらにナチスに対しても批判の筆(《ドイツの悲劇》1946)をとり,ヒトラー暗殺未遂事件(1944)の関係者の一人であった。
執筆者:岸田 達也
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1862~1954
ドイツの歴史家。国家と倫理との間の緊張を追求し,政治史と精神史との総合をめざした。帝制時代は政治体制の改革を求め,1918年ドイツ革命後は保守的観点から帝制に代わる権威として,超議会的な大統領の地位にドイツの政治の安定を期待した。主著は『世界市民主義と国民国家』(08年)『近代史における国家理性の理念』(24年)『歴史主義の成立』(36年)。
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…フランス革命の混乱と挫折とを体験した西欧では,この機械論的合理主義に対する反動としてロマン主義が登場し,人間的世界は合理的に割り切れるものでなく生命の躍動のうちに生成・発展する連続的過程であるから,これを有機的全体として歴史のなかでとらえなければならないと主張した。この立場を学問的に主張したのはE.トレルチとF.マイネッケである。トレルチはそれぞれの時代と文化はそれぞれの価値をもつものであるから,古代や中世の状態を近代の価値尺度ではかってはならず,全体を展望して〈現代的文化総合〉と〈未来への価値形成〉をはかるものとして歴史主義を説いた。…
※「マイネッケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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