フランス語のレーゾン・デタraison d'État(イタリア語ではragione di Stato)の訳語。国家理由とも訳される。この言葉は16世紀のヨーロッパで初めて唱えられ,ある人はそれを〈支配権力を樹立,維持,拡大したりするのに適した手段の認識〉と規定し,他の人は全体の利益のために日常的な法や倫理を超える支配者の特権,さらには国家の基本原理や国制を守るための指針を指すとするなど,きわめて多義的であった。これらに共通してみられるのは,国家やその国制の維持を最高の目的とし,そのためには宗教や倫理といった価値を部分的に犠牲にするのはやむをえないという考えである。その意味でマキアベリズムとの結びつきがみられる。かつて国家理性は王や王権によって体現され,行使されるものであったが,国民国家の成立とともにたとえば〈国家利益〉(国益)といった言葉と結びつきながら,より大きな規模で,しかもさまざまなイデオロギー的装いをこらしながら,今日も脈々として生きつづけている。
執筆者:佐々木 毅
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国家の維持・発展を至上とし,そのためには法や倫理などは犠牲にしてもやむをえないとする考え方。マキァヴェッリに萌芽がみられ,16~17世紀のヨーロッパ諸国の絶対主義君主が唱えたが,その後も「国益」という装いをまとって主張された。
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