改訂新版 世界大百科事典 「マイノング」の意味・わかりやすい解説
マイノング
Alexius Meinong
生没年:1853-1920
オーストリアの哲学者。グラーツ大学教授。F.ブレンターノの学派に属し,独自の対象論を提唱した。著書には《仮定について》(1902)や《諸学の体系内での対象論の位置について》(1907)などがあり,B.A.W.ラッセルやフッサールとも交流があった。彼は,対象を把握する4クラスの体験に対応させて,対象も次の4クラスに分類した。すなわち表象体験の物的対象を〈客観〉,思考体験(判断および仮定)の対象(すなわち〈Aがあること〉および〈AがBであること〉)を〈客観的対象〉,感情体験の対象を〈品位的対象〉,そして希求体験の対象を〈願望的対象〉と呼び,それら諸対象の存在性格や相互関係を考察した。例えば客観のあり方を実在,客観的対象のあり方を存立と呼び,仮にAとBが表象の対象として実在していなくても,〈AがBであること〉は存立しうるとした。また品位的対象(真,善,美)と願望的対象(当為や目的の対象)の概念に基づいて,独自の価値論を展開した。
執筆者:立松 弘孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報