マクルーハン(読み)まくるーはん(英語表記)Herbert Marshall McLuhan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マクルーハン」の意味・わかりやすい解説

マクルーハン
McLuhan, Marshall

[生]1911.7.21. エドモントン
[没]1980.12.31. トロント
カナダの文明批評家。フルネーム Herbert Marshall McLuhan。ユニークなメディア論を提唱したことで知られる。マニトバ大学卒業後,イギリスケンブリッジ大学留学英文学専攻。1946年トロント大学教授となり,1951年最初のメディア論『機械の花嫁』The Mechanical Bride: Folklore of Industrial Manを発表,メディアと人との関係・影響を独自の視点で展開,世界的に注目されるようになった。テレビ,ラジオ,印刷物などのメディアを通じたコミュニケーションを,人に向けたメッセージの伝達,あるいは身体・感覚の延長ととらえ,「メディアはメッセージである」"the medium is the message"などのユニークな文体でメディアの特徴を表現した。また,電子メディアの登場で,地球規模のコミュニケーションが成立し,世界があたかもひとつの小さな「村」であるかのようにみる「地球村(グローバルビレッジ)」という概念を推進した。こうしたメディア論はインターネット時代においても有効であるが,必ずしも楽観的というわけではない。著書に『グーテンベルク銀河系』The Gutenberg Galaxy: The Making of Typographic Man(1962),『メディア論』Understanding Media: The Extensions of Man(1964)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクルーハン」の意味・わかりやすい解説

マクルーハン
まくるーはん
Herbert Marshall McLuhan
(1911―1980)

カナダの英文学者、文明批評家。マニトバ大学卒業後、イギリスに留学。もともと正統的なイギリス中世、ルネサンス文学の学者であったが、主として1960年代以降、メディアの問題を中心とした文明論を展開、やがて広範な領域をメディアの観点から論ずるユニークな文明批評家として世界的に有名になった。マクルーハンは、人間の身に備わった機能を強化し拡大する働きをするものをすべてメディアとしてとらえた。ことに1960年代に著しい普及をみせたテレビをメディアとして高く評価し、活字メディアの制約のもとにあった人間がテレビによって全感覚的理解を取り戻したと主張した。メディアによる社会の変容を意識し、世界全体に共通した価値観や意識が広まることを予言した。それはテレビの影響にとどまらず、インターネットなどによる通信ネットワーク社会にも通じる考え方といえる。一般の考え方とは異なり、メディアの内容よりは形式、メディア特性を決定的なものとしてとらえたところから賛否が激しく対立した。メディアを広い観点からとらえ直したメディア文明論としてマクルーハンの考え方は今日でも重要視されている。

後藤和彦

『M・マクルーハン、E・カーペンター編著、大前正臣・後藤和彦訳『マクルーハン理論 メディアの理解』(1981・サイマル出版会)』『M・マクルーハン著、森常治訳『グーテンベルクの銀河系』(1986・みすず書房)』

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